2022 Fiscal Year Annual Research Report
バイオテレメトリとDNA解析によるアオリイカの人工産卵床の利用実態の解明
Project/Area Number |
20K06208
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
海野 徹也 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (70232890)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アオリイカ / イカシバ / 人工産卵床 / 資源管理 / 回遊 / 繁殖生態 / DNA多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
アオリイカは「イカの王様」と称されるほど美味で、沿岸漁業や地域振興の優良資源となっている。こうした貴重なアオリイカ資源を維持・増殖するため、各地で人工産卵床の設置されている。中でも、間伐材を利用した「イカシバ」は、その手軽さから漁業者や遊漁者らによって活気を帯びている。ところが、親イカの産卵回遊生態や、イカシバなどの人工産卵床の利用実態や有効性については未知である。本研究は、超音波バイオテレメトリによって親イカの産卵場への移動や滞留などの基礎的知見を得た。また、雌イカに対してDNAマーカーによる多型解析を行い、交接個体数を推定した。 親イカを対象に超音波バイオテレメトリを行うための検討事項として、まず、超音波発信器の装着実験を行った。水族館に飼育中の親イカ4個体の胴体尾部先端に模擬発信器を装着し、経過観察を行った。その結果、装着個体は、放流翌日から活発に摂餌し、遊泳行動も非装着個体と同様であった。次に、三重県引本湾で、親イカ7個体を釣獲し、水圧センサー付の超音波発信器を装着し、追跡した。その結果、5個体は放流後7日目まで引本湾に留まっていた。また、2個体は高頻度でイカシバに来遊していた。 日本各地で採集した雌のアオリイカ20個体を用い、口球外唇部や受精嚢内の精莢からDNAを抽出し、DNAマーカー7座を用いて多型解析を行った。20個体の雌から分離した精莢は約500本に達し、全てのアオリイカが複数の雄に由来する精莢を有していることが明らかになった。DNA多型解析による父系判別から推定した雌1個体あたり平均交接個体数は2.4個体となった。 以上、本研究によって得られた親アオリイカの回遊や繁殖生態に関する基礎的知見は、本種の資源管理や増殖に向けたイカシバや人工産床の設置に有効活用されるであろう。
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