2021 Fiscal Year Research-status Report
光合成細菌がクルマエビの自然免疫を活性化するメカニズムの解明
Project/Area Number |
20K06216
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
宮坂 均 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (60451283)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | クルマエビ / 光合成細菌 / プロバイオティクス / 自然免疫 / 遺伝子発現 / 定量RT-PCR / クチクラタンパク質 / 水産養殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
海産性Rhodovulum sulfidophilum KKMI01が持つクルマエビの自然免疫を活性化する物質を細胞壁成分のlipopolysaccharide(LPS)と予想して以下の実験を行った。前年度にR. sulfidophilum KKMI01からLPSを精製し、1pg/ml、100pg/ml 、10ng/mlの3条件でクルマエビ飼育水への投与試験を行った結果、それぞれの条件で自然免疫関連遺伝子の発現上昇が見られ、LPSが有効成分である可能性が示された。令和3年度は、R. sulfidophilum KKMI01の他に淡水生光合成細菌Rhodobacter sphaeroides NBRC 12203、パントエア菌(LPSが最もよく研究されている菌)、サルモネラ菌、および大腸菌のLPSも100pg/mlの濃度で飼育水に添加してそれぞれの菌のLPSの効果を比較した。その結果、Prophenoloxidase、Toll-like receptor、Immune deficiency (IMD)などの代表的な自然免疫関連遺伝子において、R. sulfidophilum KKMI01、R. sphaeroides NBRC 12203、パントエア菌で発現誘導が見られ、その効果はR. sulfidophilum KKMI01で一番高かった。以上の結果から海産性R. sulfidophilum KKMI01の自然免疫賦活効果の有効成分のひとつがLPSであることが示された。また、新たな発見として光合成細菌によってエビの外骨格を構成するクチクラの構成タンパク質の発現が上昇することがわかった。これは、微生物によってエビの成長が促進されることを分子レベルで示した初の例である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究で当初の目的の光合成細菌がエビの自然免疫を活性化する有効成分がLPSであることが明らかになった。それに加えて、予想外の発見として、光合成細菌または光合成細菌LPS投与でエビの外骨格を形成するクチクラ合成に関連する遺伝子の発現が顕著に上昇していることが示された。エビの成長には必ず脱皮が伴うため、新しい外骨格合成に関わる遺伝子の発現が上昇していることは、光合成細菌によって成長が促進されていることを示している。微生物によりエビの成長が促進されたという研究例は50件以上あるが、成長促進効果が分子レベルで証明されたのは本研究が初の事例である。また、菌の飼育水への添加濃度10^3 菌/ mLは培養原液(10^9 菌/ mL)の100万倍希釈(100トンの水に100 mL)であり、従来技術と比べても1/100から1/1,000の低濃度で効果があることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
海産性Rhodovulum sulfidophilum KKMI01のクルマエビの自然免疫を活性化する有効成分を細胞壁成分のlipopolysaccharide(LPS)と同定することができたが、定量RT-PCRの結果のばらつきが大きく、有意差が出せていない遺伝子があるので、エビの個体数を5以上に増やして再実験を行い、有意差があるデータを得る。またこれまでの研究でR. sulfidophilum KKMI01のエビでの効果のエビデンスがほぼ確められたので、その発展として魚(例:海産性のメダカ)での効果の検討を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で学会がOnline開催となり、旅費の支出が0円になった。またクルマエビからのRNA分離実験の回数が予定より減ったためそれに関連する物品費支出が減少した。 翌年度分として請求した助成金は、次年度研究計画に検討項目として追加した海産魚試験の費用に充当する。
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