2022 Fiscal Year Annual Research Report
光合成細菌がクルマエビの自然免疫を活性化するメカニズムの解明
Project/Area Number |
20K06216
|
Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
宮坂 均 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (60451283)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 光合成細菌 / クルマエビ / プロバイオティクス / 自然免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
光合成細菌(紅色非硫黄細菌)は自然界に広く分布する通性嫌気性菌で、酸素非発生型の光合成を行う。これまでに病原性の光合成細菌の報告もヒトでの日和見感染の報告もなく、非常に安全な菌である。本研究では、光合成細菌のクルマエビ養殖でのプロバイオティクス(善玉菌)効果を検討した。その結果、熊本県上天草市の海岸から分離した海産性光合成細菌Rhodovulum sulfidophilum KKMI01をクルマエビに投与することでエビの自然免疫が活性化されて病気に強くなり、成長も早くなることが確認できた。この菌が従来のプロバイオティクス菌(乳酸菌、枯草菌、他)に比べて優れている点は、極めて低濃度で効果があることである。具体的には従来の菌は培養原液の1000倍から1万倍希釈でプロバイオティクス効果が出るが、本菌は100万倍希釈で効果を示す。このため従来菌では数百トン規模の育苗水槽でしか利用できないが、本研究のR. sulfidophilum KKMI01は数万トン規模の屋外養殖池でも利用可能である。本菌は2021年から九州のクルマエビ養殖場で、安全安心で元気なエビを育てるために利用され始めている。 微生物(プロバイオティクス菌)によってエビの成長が促進されるという報告は過去40年間で約60報ある。本研究では海産性光合成細菌R. sulfidophilum KKMI01投与によりエビの成長に直接関与するクチクラ合成、殻の色素合成、筋肉合成に関わる遺伝子発現が高まることを示した。これは、プロバイオティクス菌の成長促進効果を遺伝子発現レベルで証明した世界初の例である。また光合成細菌がエビの免疫を活性化する有効成分の一つが細胞壁成分のLPS(Lipopolysaccharide、リポ多糖)であることも明らかにした。
|