2022 Fiscal Year Research-status Report
吸虫の被嚢幼虫寄生はブダイ科魚類の性転換を阻害するか?
Project/Area Number |
20K06219
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
下瀬 環 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(横浜), 主任研究員 (70524792)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヒブダイ / 寄生虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、雌雄別に必要数の標本を確保することが最も重要であったが、前年度までの標本収集が不十分であったために、2022年度も標本収集に注力した。本年度は2組の漁業者にも追加で標本収集を依頼し、108個体分の標本を収集した。標本数はこれまでの合計で雄40個体を含む244個体となり、当初予定していた最小限必要な尾数を確保することができた。 収集したヒブダイ標本はすべて生鮮状態で研究所に送付してもらい、標準体長、尾叉長、全長、体重などの魚体基礎情報を記録した。また、全個体で、頭部、胴部、尾部、胸鰭、腹鰭、背鰭、臀鰭、尾鰭へのスカファノケファルス属寄生虫の寄生数を記録し、鱗を剥がした後にも体側への寄生数を計数した。これらの寄生数は左右別々に記録した。標本は全個体を解剖して、性別と成熟度判定のために生殖腺を摘出、計量、保存した。また、栄養状態を簡易的に知る指標として、肝臓重量、内臓除去重量も記録した。さらに、年齢査定のために耳石を摘出し、乾燥・常温で保存した。 データの一時解析では、寄生によって肥満度や肝臓重量が減るような結果は得られなかった。ヒブダイの寄生率は、過去の研究では市場での記録で27%程度であったが、本研究では各個体を詳細に観察すると、すべての個体に何らかの寄生の痕跡が見られ、寄生率はほぼ100%であると考えられた。寄生率と寄生強度は明瞭な海域差を示し、雄の出現数にも海域差があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度までの標本収集が遅れていたために、2022年度も標本収集に注力したことから、その後の解析にとりかかることができなかった。また、参加を予定していた国際シンポジウムも延期になったために参加できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
必要数の標本収集が済んだことから、2023年度は標本の分析に取り掛かる予定である。また、結果は段階的に取りまとめ、随時発表する予定である。各解析結果をより確かなものにするために、標本収集も継続する。
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Causes of Carryover |
参加を予定していた国際シンポジウムが延期になったことから、旅費を使わなかった。標本の収集が遅れていたことから、その後の分析や公表に使用する予定の費用残が生じた。これらは2023年度に執行する予定である。
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