2021 Fiscal Year Research-status Report
Analyses of shellfish hematopoiesis using single-cell RNA-Seq and genetic engineering technology
Project/Area Number |
20K06222
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
長澤 一衛 東北大学, 農学研究科, 助教 (50794236)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横井 勇人 東北大学, 農学研究科, 助教 (40569729)
尾定 誠 東北大学, 農学研究科, 教授 (30177208)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 貝類 / 造血機構 / 幹細胞 / シングルセル解析 / 遺伝子改変 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では研究期間内において以下の3課題の達成を目指している。課題A. シングルセル解析による貝類の血球分類とマーカー遺伝子の単離、課題B. 貝類の細胞で外来遺伝子を安定発現させるシステムの開発、課題C. GFP遺伝子の導入による貝類血球の可視化である。2021年度は課題A、B、Cに対し下記の成果を得た。 課題Aでは2021年度先進ゲノム支援における情報解析支援を受け、ホタテガイ血球のシングルセル遺伝子発現解析から得られた10種類の細胞集団に対する分化経路解析を実施した。 課題Bでは種々の二枚貝種に対してエレクトロポレーション法およびマイクロインジェクション法の開発を試みた。エレクトロポレーション法の開発には、2021年度に確立したホタテガイの初代培養細胞を用いることで、遺伝子導入に最適な電気条件を見いだした。さらにこの系を使用して二枚貝の細胞で高発現を示す遺伝子プロモーターを複数同定した。またマイクロインジェクション法の開発では、ムラサキイガイやホタテガイの受精卵に対しマイクロインジェクションを実施した。これらの受精卵に合成GFP mRNAまたは発現ベクターを導入したところ、いずれの場合も上記の二枚貝の受精卵内においてGFPの発現を確認した。 課題Cでは血球のみがGFPを発現する遺伝子導入系統の作出を目指しているが、宿主染色体への遺伝子導入効率が極めて低いことが想定された。これを打開するためにレトロトランスポゾンを用いた遺伝子導入に着手した。具体的には海産二枚貝の受精卵に対し、Tol2システムと課題Bにおいて見いだした高発現遺伝子プロモーターを用いた発現システムを構築した。今後エレクトロポレーション法を用い、全ての細胞でGFP遺伝子を発現する遺伝子導入二枚貝の作出を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では2021年度において、数種の海産二枚貝において初めてマイクロインジェクションによる遺伝子導入に成功した。これまで、受精卵のサイズが極めて小さいこと、卵が脆弱であることから、海産二枚貝の受精卵への遺伝子導入には成功していなかった。したがって我々がこれまで構築してきた技術的な進歩は極めて大きいと言える。また二枚貝由来の培養細胞に対するエレクトロポレーションにも成功し、二枚貝への遺伝子導入における新たな方法論を提唱することが可能となった。さらに、これらの技術的な発展が複合的に作用したことで、二枚貝の細胞で高発現する遺伝子プロモーターの同定にも成功した。本知見は、これまでの二枚貝の遺伝子導入技術の開発の過程において極めて重要なマイルストーンになると考えられる。以上、これまでの本研究の課題の遂行状況と成果から、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は本研究の最終年度であることから、これまでに得られた成果を論文化するために必要な研究成果の取得に特に注力したい。加えて課題Aでは同定した10種類の血球細胞の各集団における分化段階と、各血球集団の形質やマーカー遺伝子を取得する。また課題B、Cでは、二枚貝で高発現する遺伝子プロモーターを使用し、遺伝子導入二枚貝を作出する技術の開発を実施する。さらにCRISPR-Cas9システムを二枚貝に適用し、種々の標的遺伝子の遺伝子ノックアウトや、GFP遺伝子のノックイン技法の開発に挑戦する。
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Causes of Carryover |
2020年度は研究計画の実施に遅れが生じ次年度使用額が発生した。しかし2021年度では、当初の予定以上に研究計画を遂行できたことで、前年度の予算も合わせて十二分に執行し研究の遅れをとり戻した。2022年度に向けた次年度使用額がわずかに生じたものの、本研究における研究計画の実施と予算執行は順調に進行している。
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