2023 Fiscal Year Annual Research Report
微細藻類におけるプログラム細胞死の分子機構解明と物質生産制御への応用
Project/Area Number |
20K06237
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻 敬典 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (40728268)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | クラミドモナス / 窒素欠乏応答 / シグナル伝達 / DYRK |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度までに、緑藻クラミドモナスにおいて、DYRKファミリーに属するタンパク質リン酸化酵素TAG accumulation regulator 1 (TAR1) が、窒素欠乏下でGametic cell divisionを駆動することで、栄養細胞から配偶子への分化を促進する役割があることを論文として報告した。また、クラミドモナスの複数の野生株間でN欠乏応答におけるTAR1の機能を比較し、野生株C9ではTAR1が窒素欠乏下での細胞死を促進するが、その他の野生株(CC-125やCC-1690)ではTAR1による細胞死の促進は軽微であったことから、TAR1による細胞死の制御については株間の差異が大きいと考えられる。2023年度は、細胞死制御因子であるTAR1の上流制御因子およびTAR1と同じDYRKファミリーに属するPlant-specific DYRK (DYRKP) 1に着目し、TAR1との機能やカスケードの階層構造について調べた。その結果、クラミドモナスのDYRKP1変異体は、TAR1変異体とは異なり白化に顕著な表現型はみられず、DYRKP1は窒素欠乏下の細胞死には関与しないことが明らかになった。また、TAR1およびDYRKP1とTORシグナル系の関連を調べるために、各変異体においてTOR阻害剤の生育に対する影響を調べたところ、TAR1とDYRKP1はTORの下流でそれぞれ生育を負と正に制御することが明らかになった。以上の結果は、細胞死やストレス応答にTORシグナル系が関与することを示唆しており、窒素欠乏ストレス応答におけるキナーゼカスケードの階層関係も含めて新たな知見をもたらすものである。緑藻に加え、海洋の主要一次生産である珪藻においてもTORシグナル系とストレス応答・細胞死の関連を調べるために、珪藻のTOR活性を測定する方法を確立した。これにより、これまで困難であった珪藻のTORシグナルを調べるための技術基盤が整った。
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