2022 Fiscal Year Annual Research Report
九州山系ヤマメの秋銀化発動機構の解明と光波長による人為銀化誘導技術の確立
Project/Area Number |
20K06240
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
内田 勝久 宮崎大学, 農学部, 教授 (50360508)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 銀化変態 / 甲状腺 / 海水適応 / ヤマメ |
Outline of Annual Research Achievements |
サケ科魚類の銀化変態期には、体表の銀白色化や甲状腺の活性化、海水適応能の獲得などの形態的・生理学的変化が生じる。九州山系のヤマメは、受精後約1年目の秋にわずかに銀化するが、本州以北に生息する北方系ヤマメは、さらに半年遅れた春に銀化し、降河する。銀化の生理学的基盤については、春銀化系統ヤマメにおいて研究知見が集積されているが、秋に銀化する南方系ヤマメにおいては知見が乏しい。また、銀化発動期に、異なる系統ヤマメを同一の環境条件で飼育し、銀化変態や海水適応能を比較解析した事例は無い。本研究では、北海道産ならびに九州・五ヶ瀬産ヤマメの飼育試験を宮崎県五ヶ瀬町で継続し、秋から翌年の春にかけて、銀化の進行を評価するとともに、12月と5月における2系統ヤマメの海水適応能を理解することを目的とした。 秋期(10月から12月)および春期(3月から5月)に、外部形態観察による銀化の発動や進行を評価するとともに、銀化に寄与するとされる甲状腺を組織学的に解析した。その結果、五ヶ瀬産ヤマメは、秋期に銀化を発動する個体の割合が高まり、甲状腺の濾胞上皮細胞高も増加した。また、銀化最盛個体の割合は12月に約60%を示したが、その割合は5月には0%となった。一方、北海道ヤマメにおいては、秋期に銀化最盛個体は認められず、濾胞上皮細胞高に変化も認められなかった。しかし、春期においては、全ての個体が銀化最盛個体となり、甲状腺細胞の活性化が認められた。以上の結果から、五ヶ瀬ヤマメは秋に銀化を発動し、銀化最盛個体の割合が高まるが、その後、春にかけて銀化が退行すること、北海道ヤマメは冬期に銀化が徐々に進行し、春に最盛期を迎えることが示された。五ヶ瀬ヤマメは12月に、海水適応能を示したが、5月には海水適応能を有していなかった。一方、北海道ヤマメは12月に海水適応能を全く示さず、5月に海水適応能を獲得した。
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