2020 Fiscal Year Research-status Report
シガトキシン同族体(CTXs)による電位依存性Na+チャネル阻害の分子機構解明
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20K06246
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
池原 強 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 教授 (90359951)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 海洋自然毒 / シガトキシン / 電位依存性Na+チャネル / リコンビナントタンパク |
Outline of Annual Research Achievements |
シガトキシン(CTX)やブレベトキシン(BTX)等多くの海洋自然毒は、電位依存性Na+チャネル(Navch)を分子標的とし、CTXやBTXがNavchの特定の部位(site-5と呼ばれるポアドメイン領域)に結合することでチャネル機能が阻害されると推定されてきた。しかし、この仮説提唱後に単離されたBTXB2、B3、B4やCTX類あるいは化学誘導体の構造と生物活性は仮説に合致せず、CTXやBTXが結合すると想定されるsite-5の位置や結合様式の詳細は明らかにされていない。そこで、本研究ではリコンビナントNavch(rNavch)と蛍光標識したBTXを用いたin vitro Navch競合結合試験系を構築し、構造の異なる各種CTX同族体によるNavchへの結合を測定することによってNavchを標的とする海洋自然毒の結合特性や結合部位を解明するための研究基盤を構築することを目的とした。 令和2年度は、試験系構築に必要なリコンビナント細菌Navch(rNavchRp)の大量調製及び蛍光標識したBTXの調製を行った。rNavchRpの大量調製は、R.pomeroyi genomic DNAからNavch遺伝子のクローニングを経て作製された発現ベクターを利用して、大腸菌発現系での目的タンパク質の発現精製を行った。蛍光標識したBTXの調製は、蛍光色素BODIPYとPbTx2の反応により蛍光誘導体を作製した。今後は、これらを用いたin vitro 競合結合試験系の構築を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、リコンビナントNavchの発現、精製条件を検討し、さらに蛍光色素BODIPYとPbTx2の反応、精製を行った。成果として、高純度なリコンビナントNavchを精製し、SDS-PAGE、nativePAGEによる分析によって精製タンパクが四量体を形成していることを確認できた。 また、BODIPYの蛍光シグナルをイメージアナライザーで定量する系を構築し、精製したBODIPY標識PbTx2の定量を行った。これらの成果から、進捗状況はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度の成果として、高純度なリコンビナントNavch とBODIPY標識PbTx2の調製方法、及びBODIPYの蛍光シグナルの検出システムを構築できたことから、令和3年度以降は、これらを利用して結合活性の確認や定量方法を確立し、NavchへのCTX同族体の結合能を測定することで、Navchへの結合が知られている他の海洋自然毒との相互作用についても解析を行い、海洋自然毒モニタリングへの技術基盤を構築する予定である。さらに、BODIPY以外の標識色素の利用についても検討する予定である。これらの成果は、論文発表や学会発表等を通して広く社会へ発信する予定である。
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