2020 Fiscal Year Research-status Report
日本近海における外国漁船の操業と日本漁船に及ぼす影響の実態分析
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20K06249
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐々木 貴文 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (00518954)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 東シナ海 / 日本海 / 日本漁船 / 外国漁船 / 労働力不足 / 外国人労働力 / 技能実習生 / マルシップ船員 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、現地調査の実施が新型コロナ感染拡大問題の発生により相当の困難に直面した。コロナ問題が小康状態の際に、一か所のみ現地調査を実施することができたものの、その他に予定していた各地での調査は、現地からの要請もあって中止することとなった。 そのため、現地調査が不要な基本的データの収取、分析を優先して実施した。具体的には、国境域で操業する日本漁船で働く人材の動向、外国人労働者の実態、経営状況の把握などであり、公表されたばかりの2018年漁業センサスなどを主要な分析対象とした。 各種の分析結果については、漁業経済学会第67回大会シンポジウム(オンライン開催)で報告するとともに、佐々木貴文「水産業における外国人労働力の導入実態と今後の展望」、東京水産振興会『水産振興』54(6)、1~45ページ、2020年10月や、佐々木貴文「コロナ問題と漁業・水産加工業-外国人労働者を取り巻く環境変化に注目して-」、全農林労働組合『農村と都市をむすぶ』70(11)、28~36ページ、2020年12月、そして佐々木貴文「あい路にある沿岸漁業が模索し始めた抜け道とは 」、漁業経済学会『漁業経済研究』65(1)、1~17ページ、2021年1月などの拙稿にまとめたところである。 かかる拙稿では、国境域での漁業を担う各種漁業の労働力不足や経営体数の減少、そしてこうした漁業経営体が根拠とする漁村(漁港背後集落)の過疎・高齢化などの実態が詳細に明らかになっている。外国漁船の競合という「困難」に直面する日本漁業が、相対する勢力の前で委縮し、足元の土台すら崩壊しかねない厳しい環境下にあることが明らかになったと評価することもできる。 なお、こうした研究成果については、内外情勢調査会や大日本水産会、日本弁護士連合会などの各団体からの講演依頼を受けて公表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染拡大問題の発生で、ヒアリング調査の対象となっている漁業協同組合や漁業会社などが、受け入れに難色を示した結果、十分な調査が難しくなった。 初年度においては、沖縄県那覇市において、漁業者を対象とした調査を1回実施することができたものの、本来、東シナ海状況については、沖縄県石垣島や与那国島、宮古島などでのデータ収集を予定していたため、いまだに十分な現地データの蒐集にはいたっていない。 今年度以降も、「コロナ第四波到来」などが伝えられるなか、厳しい状況が続くものと考えられるが、現地の意思を尊重しながら、可能な限りヒアリング調査を実施、現状の把握に努めたい。初年度に実施できなかった残りの東シナ海実態調査の他、日本海実態調査をおこないたいと考えている。 ただ現地調査が難しい場合も想定し、引き続き基礎資料の蒐集などにあたることも検討し、本研究課題の遂行に努めていきたい考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、新型コロナ感染拡大問題による混乱が続いていることから、現地調査の推進には対象者の意向に十分に配慮しながら実施可能性の模索を続けていきたい。ただ今年度以降も、「コロナ第四波到来」などが伝えられるなか、現地関係者・関係団体の調査受け入れ判断は好転しないことも考えられるため、引き続き基礎資料の蒐集などにあたり、現地調査が可能となった際に円滑な調査が可能となるよう準備することも検討している。 また、基礎資料の蒐集で有意なデータが得られた場合は、学会や講演会などで積極的に公表することで、責務を果たしていきたい。2021年6月に開催予定の漁業経済学会第68回大会のシンポジウム(オンライン開催)では、かかる基礎資料の二次分析結果を公表する予定となっている。もちろん、学会誌への投稿も検討している。 なお、コロナ問題が小康状態を示した場合は、沖縄県での東シナ海マグロはえ縄漁業調査や、石川県での日本海イカ釣り漁業調査を実施し、中国漁船や北朝鮮漁船との競合関係の実態把握を進めたいとの意向を持っている。しかし実施できた場合でも、やはり現地の意思を尊重しながら、慎重にヒアリング調査を実施することで、現状の把握に努めるとの姿勢を堅持したいと考えている。 今後も引き続き、現地調査が難しい場合も想定しつつ、本研究課題の遂行に努めていきたい。
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Research Products
(4 results)