2020 Fiscal Year Research-status Report
防災・減災機能に着目した都市近郊農業の役割と災害リスク管理
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20K06254
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
丸山 敦史 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 准教授 (90292672)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 住民評価 / フィリピン / 決定木 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、データの処理方法について、主に住居と農地の空間的近接性に注目して最適な手法を特定することが課題であった。しかし、文献調査を進める中で、近接性をどう数値化するのかという技術的な問題よりも、近接性に対する住居者の評価を数値化し分析に取り込む枠組みの構築が急務であることが分かった。例えば、災害に対する住民不安の所在とその強さは国家間で大きく異なり、具体的には、途上国は先進国に比べ、食糧の貯えといった日常的な事柄よりも、むしろ、建物や社会基盤に対する不安が大きいという傾向が見いだされた。併せて、身近な空間(オープンスペース)のとらえ方も多様であること、近年の研究事例が少なくメタ分析が難しいこと、日常生活のしやすさと緊急時の安心感との間には線形的な関係がある地域とそうではない地域が共存すること、なども明らかになった。今後の調査では、これらの事柄についても考慮したい。 コロナの影響を受け現地調査が思うようにできなかったことから、フィリピンで過去に収集したデータを用いて災害復旧・防災要因を検討した。このデータは災害脆弱性に関するインデックス分析のために用意されたものである。インデックス分析では、この変数は脆弱性を改善させる(悪化させる)ものであるといった規範的な基準が暗に用いられることが多い。しかし、現状を記述するといった意味で変数間の関連性を把握するには、この考え方は適切ではない。そこで探索型の分析枠組みとして、決定木分析のアンサンブル学習モデルを用いることとした。決定木は知識や情報の発見に適している手法であり、アンサンブル化することで予測精度の高いモデルを追求することが出来る。分析の結果、防災面では有効なモデルが見つけられなかったが、災害復旧については、コミュニティー内の人的な親密度が、地理的要因や他の個人世帯属性よりも災害復旧について大きい効果を有することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
文献調査の結果から、生活空間・社会基盤についての安全意識を明示的にとらえた評価枠組みを設計しなくてはならないこと、既存の農家調査データを用いた探索型モデル分析の結果から、コミュニティー内の人的関係を考慮した上で、災害の主観的因果関係の把握を行う必要があることなど、分析の一部見直しが必要であることが明らかになった。したがって、研究自体はスタート出来ているが、全体としては当初計画より「やや遅れている」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、昨年度明らかになった課題に対応するため、評価項目の再検討を行う。当初計画では、防災・減災に関わるステークホルダーへの現地ヒアリング調査を企画していたが、コロナの影響でその実施が難しいことから、途上国でのネット調査を出来る限り早く、前倒しで実施することとする。この調査では、計画よりも対象地域を拡大し、都市・農村の住民の多様性(地域性、社会環境、コミュニティーの状況、専門性など)をより詳細に把握できるようにし、ステークホルダー調査の目的の一部を代替できるようにしたい。
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