2021 Fiscal Year Research-status Report
新バイオ・植物工場技術に関する効果的な情報提供方法の検討:消費者意識の国際比較
Project/Area Number |
20K06255
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
矢野 佑樹 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 講師 (40618485)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 敦史 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 教授 (90292672)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ゲノム編集食品 / 消費者 / 情報提供 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、一般消費者のゲノム編集食品に対する関心や態度、その安全性や制度に関する情報に対する反応を明らかにするために調査・分析を行った。調査は、昨年度に準備した調査票を基にWebアンケートにより2021年6月に実施し、1,587名の消費者から回答を得た。その結果、以下のことが明らかになった。第一に、ゲノム編集食品を知っていたのは回答者の約25%で、安全確保の手続き(届出制度)まで知っている人の割合は低かった。その一方で、ゲノム編集食品についての簡単な説明を提示し、流通の賛否を尋ねたところ、賛成派が反対派を上回る結果となった(賛成派が約6割)。また、流通に反対した回答者でも、半数は表示があれば流通してもよいと回答した。第二に、追加情報として、「ゲノム編集食品の安全性に関する情報」、「いらない形質の除去に関する情報」、「安全確保の手続き(届出制度)に関する情報」を聞いてみたいかそれぞれ尋ねたところ、すべて「聞いてみたい」と回答した割合は全体の47%に留まった。特に、賛否の理由が不明瞭であった人は情報を読み飛ばす割合が高く、安全性や制度の情報が届かないグループが存在することが明らかになった。第三に、追加情報提供後、反対から賛成に変化したのは全体の6%(最初に反対だった回答者の15%)で、情報を聞いた回答者の割合が高かった。一方、賛成から反対に変化したのは全体の3%で、情報を聞かない回答者の割合が高かった。これらのことから、情報を聞くことによって賛成派が多少増えることが示されたが、最初に反対の回答者で情報を聞いたのは、もともと新しい技術に対する抵抗感があり、食品安全性への信頼が低い人たちであるため、その効果は限定的であることも明らかになった。これらの結果は、今後、ゲノム編集食品に関する情報提供・コミュニケーションのあり方を検討する際の基礎資料になると思われる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、国内での調査を実施し、結果をしっかりとまとめることができたものの、昨年度文献レビューやニュース記事の分析、調査票の準備等に時間がかかったことから生じた遅れを完全に取り戻すまでには至らなかった。海外調査等の実施は翌年度に変更せざるを得なくなったが、アンケートの回答者に提示する説明資料は重複するものもあるため、国内調査の結果を踏まえて、今後の調査の準備は円滑に進めることができると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、まず海外調査を実施するための文献レビューを進める。その結果と国内調査の結果を踏まえ、海外でWebアンケートを行い、ゲノム編集や植物工場に対する消費者の意識や情報源、情報に対する反応、情報回避の動機などを明らかにする。国によって制度が異なることや、より信頼できるデータを収集するため、予算の範囲内でできるだけ調査を実施したいと考えている。
|
Causes of Carryover |
本年度は国内調査の実施に関する支出があったが、申請当初予定していた海外調査の実施は翌年度に変更せざるを得なくなったため、次年度使用額が生じた。また、新型コロナウイルス感染症拡大によって学会への参加費や交通費等の支出が発生しなかったことも原因の一つである。今後予定している翻訳や海外調査、論文の投稿のために使用したい。
|