2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K06266
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
外園 智史 九州産業大学, 経済学部, 准教授 (40611570)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 価格変動 / コメ価格 / 相対取引 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、我が国内でのコメ価格について、コメ生産者が相対取引によってコメを売却した際、農協等の主要農業団体を通した場合と、民間会社が取り持つインターネットによるマッチングを利用した場合を比較した。得られたデータの期間は平成23年から平成30年までである。なお、この場合のインターネット取引は、生産者から消費者へ直接販売する場合を指すのではなく、比較的大口の業者間による相対取引を指している。 分析の結果、団体を通すか否かによって、価格水準に有意な差はほとんど見られなかった。今後データ数を増やせば有意な結果が得られる可能性はあるが、その差は大きくはないと考えられる。また、両者の価格はおおむね連動しており、現在でも、農協等の団体によるコメ価格形成は、その他の取引による価格へ強い影響を与えていることが示唆される結果となった。 また、コメ価格変動については、期間全体を通じて、団体を通した場合、インターネットによるマッチングを利用する場合に比べて、変動が抑制されることが明らかとなった。この結果は特に、魚沼産コシヒカリ等の高価格帯ブランド米において顕著な傾向がみられた。 農業の不確実性は生産の安定だけではなく、価格の安定についても非常に重視されていると考えられるが、各種農業団体は、こうした点でもコメ農家の自衛団体としての役割を果たしているといえることが明らかとなった。 今後の課題として、ブランドや価格帯別に影響が異なる要因は何か明らかにすることなどが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は国内においては保険の加入状況やその影響等について、国外においては農産物市場安定のための各種政策について調査を行う予定としていたが、コロナ禍の影響を受け十分な調査を行うことができなかった。そこで、実地調査を伴わない、遠隔で入手可能なデータや、過去に入手したデータのみで分析を行わざるを得なかったため、当初の計画どおりに研究を進行することが難しかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も今年度と同様に実地調査を行うことが難しい状況も予想されるため、計画を変更せざるを得ないと考えられる。そこで今後は、FAOなどで公表されている統計の利用を中心とし、分析を進めたい。 具体的には、生産の不確実性の実態、価格変動の実態について、その変動の程度を明らかにすることで、国際農産物市場の不確実性の程度を明らかにする。 また、今年度実施した我が国におけるコメ価格変動に関する分析については、品種別、地域別などさらに精査することで、変動要因についても接近したい。
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Causes of Carryover |
本年度、コロナ禍により実地調査が難しく、旅費が抑制されたため次年度使用が生じた。今後、複数財、複数国における多数の計量分析を繰り返すこととなるため、これに耐えうるコンピューターの導入などに充てたい。
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