2021 Fiscal Year Research-status Report
Method development and actual situation elucidation of standard setting of agricultural production indices
Project/Area Number |
20K06276
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
平泉 光一 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (00282997)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 標準時間 / 標準収量 / 標準指標 / 最頻値 / コア中央値 / 鍾形頻度最頻値 |
Outline of Annual Research Achievements |
農業における標準原価計算や営農計画策定の前提として、作業時間や作物収量の標準値の設定が必要になる。既に、作業時間については「標準時間」の概念がある。本研究では、時間以外にも標準化する指標を拡張して、収量や品質等をも含めて「標準指標」という概念を措定し、統計学的方法から農業における標準指標を設定する方略を採用した。標準指標は、過去の時系列データから単純に平均値をとればいいのではなく、目標値でありつつ予想値でもある代表値として最頻値を選択した。しかし、ヒストグラムを用いる通常の最頻値計算法では一意的な最頻値が得られないので、一意的な最頻値計算方法を開発・改良することにした。1年目の令和2年度においては、実用的な最頻値計算法として新たに「コア中央値」を学会誌に発表し、さらに「鍾形頻度最頻値」の新規考案を行った(ただし、コア中央値は科研費助成以前からの継続研究)。2年目の令和3年度において「鍾形頻度最頻値」を論文化して学会誌に投稿した(年度末の時点で査読の結果は出ていない)。鍾形頻度最頻値は、鐘形の頻度関数(上に凸の2次関数の0以上1未満の部分が鍾形で、他の部分は0となる非連続な関数)を最大化する最適解としての位置パラメータである。また、令和3年度には、最頻値が本当に標準指標として相応しいかを確かめるために、日本全国の水稲および大豆の収量の30年分の時系列データからコア中央値を計算してみて平年収量に近似するかどうかを検証した。過去6年、8年、10年の収量データを用いた場合、平均値や中央値よりも最頻値としてのコア中央値が平年収量との誤差が相対的に小さくなることを見出した。作物の平年収量が最頻値で近似できることは、標準指標を統計的に求める場合に最頻値が有力な代表値であることを示していると考えられる。この結果は令和4年度の前半のうちに論文化して投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「鍾形頻度最頻値」の開発は当初の計画では2年目に行う予定であったが、投稿はしているが、まだ審査中で掲載決定の段階ではない。当初の計画では最初に開発する予定の「中間最頻値」(代替最適最頻値に名称変更予定)については3年目に行うことにした。 本研究で一意的な最頻値の計算方法を確立させることを目指しているが、まだ途上にある。 また、当初の計画の副次的な予定としては、営農現場における農業生産指標の計画値(標準値)の水準設定の実態調査のために事例研究の候補の農業者を新潟県内を中心に探し、相手方の同意が得られる範囲で予備調査に着手するつもりであったが、2年目の令和3年度においても、新型コロナの流行の影響で対面調査を見送る選択をとらざるを得なかった。あと1年しかなく、事例研究による実態調査の計画の達成は難しい見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目の令和4年度には、最頻値が本当に標準指標として相応しいかを確かめるために作物収量のデータから検証する論文を投稿するとともに、「中間最頻値」の開発を完成させて年度内に学会誌に投稿するようにしたい。また、準最頻値として、刈込平均を一般的に拡張した代表値として、標本のなかから選択した一定個数の観測値の偏差平方和を最小にする「一般化刈込平均」を開発するアイデアも論文化したい。また、コロナ禍が収まれば、当初の研究計画にあるように最頻値や準最頻値を基準として営農現場における農業生産指標の計画値(標準値)の水準設定に関するヒアリングによる実態調査に着手したいが、こちらは難しい状況である。
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Causes of Carryover |
実態調査の未実施と論文執筆・投稿の遅れによって、データの整理・計算で雇用する予定が年度内になくなったので「謝金」の支出がなくなり、また、論文の投稿が遅れて投稿料等が要らなかったので「その他」の経費の支出が少なくなった。さらに、コロナ禍で調査出張ができなかったので「旅費」の支出がなくなった。そのため、一部次年度使用となった。 平成4年度には、データの整理・計算で学生アルバイトを雇用する予定であり、「謝金」の支出が見込まれる。論文投稿を予定しているので、投稿料や英文校正費用等が必要で、また、最終年度の報告書の印刷も予定されているので「その他」の経費の支出増が見込まれる。
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