2020 Fiscal Year Research-status Report
コメ産業のシステム間国際競争:バリューチェーンの一部としての国内農業の市場対応
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20K06277
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
伊藤 亮司 新潟大学, 自然科学系, 助教 (70334654)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コメ産業 / 農産物輸出 / 現地化 / 国別システム間競合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本のコメ産業システムの国際化対応について、競合するアジア諸国の展開と比較しつつ、バリューチェーン全体の「システム輸出」の現段階的特徴について実態調査により明らかにすることとしている。具体的には、コメ及び加工品・資材製品市場における、①製品輸出・販売、②海外現地生産化、③現地販売促進機能としての日本産米の位置づけ、④国際対応の進展による国内生産への跳ね返り効果の検証が予定されている。コロナ情勢のもとで、対象国における実態調査は、今年度は非現実的であると判断し、① 各国における日本産「コメ・コメ加工品」の販売・マーケティング実態の検証については、当該企業の日本(本社機能)での展開・新たな戦略構築についての考えをヒアリング調査により明らかにしつつ、今後、情勢が落ち着いた際の現地実態調査に向けての関係構築につとめた。② 各国における「コメ・コメ加工品」の流通構造とそこでの製品競合関係の検証については、現地における研究協力者からの情報を得るにとどめ、そのための人間関係の強化を図った。③ コメ生産および加工・製品流通の現地化、④ 現地系資本による「日本風」製品製造と日系製品との市場競合の検証については、もともと3か年の計画の後半に位置付けていたので、その計画を踏襲するべく文献調査を開始した。この間の研究成果は、書籍2報(ミネルバ書房および筑波書房より近刊予定)による公表を予定している。それに加え、魚沼米のブランド力および国際競争力についての知見を基にした農業構造分析に関する研究成果をヨーロッパ農業経済学会にて報告する予定だったが、コロナ禍の影響で大会が中止されて今に至る(なお論文自体は先日受理され近刊予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始年であったことから、当初、まずは現地でのディスカッション・予備調査を企図していたが、コロナ禍により実現できなかった。そこで、本格的な海外調査に向けて、改めて研究協力者および対象者との関係づくり、および国内外のコメ産業の海外戦略の概要把握(文献調査を含む)に努めた。実態調査については、日本側(本店機能)についての調査に重点を置き、海外の対象国調査は後年にシフトさせることとした。そのための準備と割り切って、1年間行った調査は、(意外)と充実しており、海外における関連業界についての英語文献および中国語および韓国語での研究成果を研究協力者との連携により一定収集することができた。日本でのグローバル対応企業への実態調査は、主に電話およびオンライン調査とし、酒造業、コメ卸売業(輸出商社を含む)、米菓企業の動向を一定把握することができた。香港市場を分析対象の柱の一つと想定していたが、国安法をめぐる緊迫した情勢のもとで、われわれとの接点自体が「外国勢力との共謀」とされ、研究協力者の立場を不安定化させることが危惧されたため、連絡・やり取りを最低限として慎重に行った。その分、タイおよびシンガポールに拠点をもつ日本の農機メーカーの子会社を通じ、農機等販売の促進策としての日本米・日本のコメ加工品の輸出振興が戦略的に行われ、その延長上に、タイ産米のシンガポール市場での販売を日本企業がコーディネートする新たな動きを確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、当面は国内調査にとどめるが、年度後半には、状況をみつつ、現地での予備調査を試みたい。ひとつは、当初、最重要していた、香港・台湾における市場実態調査および韓国・中国における「日本風」製品開発・輸出・国際市場での国際的競合についての実態調査を開始したい。それに加え、新たに見えてきたタイおよびシンガポールにおける新たな日本企業の展開についても現地確認・実態調査の深掘りを行いたい。また、年度前半には、そのための準備として、昨年度から行ってきた日本側での本店機能に関する調査にめどをつけ得たい。
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Causes of Carryover |
海外実態調査が困難になったことで、その分が未使用となった。国内調査についてもオンライン調査等を基本としたため、実費支出が極端に少なくなった。その分、やり残した調査を内容的に補うため、次年度は、国内外における対面調査が必要となる場面が増えると考えている。今年度についても、コロナ情勢を見ながら慎重に検討し、リスクの高い研究活動にならないよう、場合によっては、計画自体を後ろ倒しにして、安定的な調査環境・条件が整ってからの再計画も視野に入れる。
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