2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of sustainable irrigation management system by a few returnees in Fukushima disaster area
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20K06292
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
申 文浩 福島大学, 食農学類, 准教授 (50710216)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 灌漑排水 / 営農再開 / 震災復興 / 公的管理 / ICT / 灌漑管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、福島県浜通りに位置する灌漑地区において、放射性物質の流入防止を目的とした用水路に蓋をかける事業によって、土地改良区の維持管理業務の副次的効果を引き続き調査検討するとともに、野生動物が現れた時に音を発する遠隔監視カメラを蓋かけ事業用水路に設置し、音を発して野生動物を追い払う取り組みを行い、一部効果が得られた。 また、小規模土地改良区の職員など農業水利施設の管理者自らが、設置管理でき、水配分に活用できる低コストの遠隔監視システムを検討し、情報通信技術(ICT)を活用した農業用水の情報共有化システムを開発した。 さらに、中通りに位置する同一水系の複数灌漑地区を対象に、土地改良区間の水利調整の現状と課題を調べるとともに、農業水利施設を効率的に管理するための土地改良区の統合・連合の課題を検討し、統合整備事業施行にあたって、①農林水産省は現場との信頼関係を築き、事業の主導権を握ることで、関係市町村や土地改良区、農業者と連携して事業に取り組むことが重要であること、②自治体は米価の低迷などの農業情勢の課題に対し、農業者を守る支援策により農業者の経済状況改善に取り組みながら、より現場に近い存在として農林水産省と土地改良区、土地改良区と住民の連携を強化する役割を果たすこと、③土地改良区は、事業設計に現場ニーズが反映されるよう、組合員を代表し、積極的に議論に参加する必要があること、④農業者は、所属する土地改良区と一体となり、当事者意識を持って営農と農業水利施設の維持管理に取り組むこと、などが重要な課題であることを明らかにした。 本研究の結果は、灌漑管理システムの再構築に向けた統合整備における農林水産省、自治体、土地改良区、農業者の役割分担や、今後の国営及び県営農業農村整備事業の立案に資することを期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、福島県の灌漑地区を対象に下記の4つのテーマについて明らかにすることを目的としている。 ①効率的に管理できる灌漑管理システムのあり方:被災地の条件、水利施設の管理状況や、生産活動に関わる実態を明らかにした。少ない帰村者による灌漑管理を可能にするための灌漑管理システムのあり方は、次年度に取りまとめる予定である。 ② ICTを活用した農業用水の情報共有化システムを開発:情報通信技術(ICT)を活用した農業用水の情報共有化システムの開発は、ほぼ終えており、土地改良区の職員自らが設置・管理できるようなシステム構築を検討している。 ③持続可能な灌漑管理組織の設計原理と公的支援のあり方:同一水系に位置する複数の土地改良区を対象に、水利調整の現状と課題を明らかにした。今後、土地改良区の統合・連合に必要な公的支援のあり方や、韓国における公的灌漑管理の特徴を検討する必要がある。 ④灌漑管理システムの将来の姿を提案:上記の調査研究結果を取りまとめ、次年度に将来の姿を提案する予定である。 全体として、①②に必要なデータはほぼ得られており、今後は詳細な分析を行う状況なっている。以上から、当初の計画よりも現状は進捗しているものといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
①効率的に管理できる灌漑管理システムのあり方:被災地の条件、水利施設の管理状況や、生産活動に関わる実態を継続的に調査すいるとともに、効率的に管理できる灌漑管理システムのあり方を取りまとめる。 ② ICTを活用した農業用水の情報共有化システムを開発:開発した遠隔監視システムを土地改良区の職員自らが設置・管理できるように簡単な手引きを作成し、普及できるように社会に発信する。 ③持続可能な灌漑管理組織の設計原理と公的支援のあり方:上下流に位置する同一水系の土地改良区の統合・連合に必要な課題を明らかにし、公的支援のあり方を検討する。また、韓国農漁村公社による農業水利施設の公的灌漑管理について、調査研究を行い、福島県の灌漑管理に活用できる設計原理を検討する。 ④灌漑管理システムの将来の姿を提案:引き続き、上記の調査研究結果を取りまとめ将来の姿を提案する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、韓国農漁村公社による公的灌漑管理システムの調査研究がやや遅れているため、次年度使用額が生じたが、次年度に韓国の調査研究が複数計画されており、現地調査旅費等に使用する予定である。
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