2021 Fiscal Year Research-status Report
Another role of paddy field as essential substances supplier in an aquatic ecosystem
Project/Area Number |
20K06295
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
平松 研 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (90271014)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 水田の多面的機能 / 物質循環 / 溶存鉄 / 腐植質 / 河川生態系 / 安定同位体比 / アユ |
Outline of Annual Research Achievements |
設定した試験農地(津保川合流部付近の3つの水田,水路)において鉄,ケイ素,腐植様物質,DOC(溶存有機態炭素)を計測した.用水路・水田・排水路の経路において鉄,腐植様物質,DOC のいずれも上昇傾向が見られ,水田農業が河川への物質供給の役割を担っていることが確認できた.ケイ素は水田内で低下するが,排水路では用水路と同程度の値をとり,表面水としては大きな影響は見られなかった.鉄と腐植様物質,DOC と腐植様物質は高い相関がみられていることから,水田における DOC には一定量の腐植様物質が含まれており,鉄と結合して錯体を形成しているものと推察された. 長良川においては,藻類の光合成活性度を示す δ13C は上流から下流方向に低減し,吉田川の浄化センター下流と桜橋が明確に低くなった.一方で δ13C は溶存無機炭素(IC)が多いほど低下することが知られており,下流ほど IC が上昇する傾向が見られるため,その影響も大きいと考えられた.δ15N については,逆に下流ほど上昇する傾向が見られ,特に千疋大橋から穂積大橋に向かって δ15N が上昇することから,農地の影響が推察された.δ15N 分布はいずれも降水の値よりはやや高い値を示しており,人間活動の影響を受けていることが確認できるが,その程度は小さい.藻類の δ13C は日射などの影響を受けやすいため,時間,場所による不規則な変動が大きかったが,δ15N については比較的安定した値をとっていた.本川で採捕されたアユのδ15N は季節が進むにつれて藻類に近づくように低下し,δ13C は逆に上昇する傾向がみられた.概ね7月頃にはアユの δ15N と藻類の δ15N の差が 3‰程度になっており,鮎の筋肉部位が藻類によるものに置き換わったと考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験においては水田に設置した自動採水機や酸化還元電位計が適切に稼働しなかったり,河川の調査においては対象としている生物種が採捕できなかったりするなどのトラブルもあり,必ずしも期待した成果のすべてが得られたわけではないが,本年度は特にアユと藻類の安定同位体比において興味深い成果が得られた.水田からの溶存鉄についても流入に比べて流出の濃度が高くなる傾向を示しており,仮説としている水田が湿地の代替機能を果たしていることを示唆するものとなっている.この成果は令和4年度の農業農村工学会でポスター発表する予定となっている.
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Strategy for Future Research Activity |
水田の調査においては,当初予定していた酸化還元電位の測定などがうまくいかず,不十分な結果となっている.季節的な変動や,鉄の増減に対する環境要因の特定が今後の課題となる.また,昨年度,長良川河川内の溶存無機態炭素の分布が確認できたが,その分布を決定する要因については不明瞭のままである.藻類の活性にも影響を与えている可能性があり,農地との関連についても明らかにしていく必要がある.
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により実験計画が遅れている部分があるため,必要に応じて次年度に繰り越した.
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Research Products
(2 results)