2021 Fiscal Year Research-status Report
バイオ炭の混合による家畜排せつ物堆肥化時の悪臭低減
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20K06313
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
前田 武己 岩手大学, 農学部, 准教授 (40333760)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | バイオ炭 / 堆肥化 / 家畜排せつ物 / 悪臭 / 低級脂肪酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
バイオ炭を堆肥原料として家畜ふんに混合することを想定し,家畜ふんに含まれる悪臭物質である低級脂肪酸(VFA)の除去について検討を行った。予備実験から悪臭を発する乳牛ふん(水分85 %)には,酢酸5000 mg/kg,プロピオン酸2500 mg/kg,n-酪酸1000 mg/kg,iso-吉草酸200 mg/kgが含まれると仮定し,堆肥化時にはこの乳牛ふんに対して質量比2 %のバイオ炭を混合することを想定した。このため,酢酸6250 mg/L,プロピオン酸3125 mg/L,n-酪酸1250 mg/L,iso-吉草酸250 mg/LとなるようなVFA混合液を調製し,この40 mLに試料炭1 gを加えて6 hの吸着試験を行い,各VFAの除去率を求めた。 除去率はn-酪酸,iso-吉草酸,プロピオン酸,酢酸の順に大きく,VFA種により除去率が大きく異なることがわかった。混合液中の各VFA濃度は,酢酸,プロピオン酸,n-酪酸,iso-吉草酸の順に大きかったが,これらの濃度と除去率には関係がなかった。このことから,バイオ炭によるVFAの除去では,臭気の強いn-酪酸やiso-吉草酸が多く除去される可能性があることがわかった。 試料炭による違いでは,VFAの除去率が最も高いのはカラマツ炭600 ℃であり,n-酪酸では55 %,iso-吉草酸では29 %,プロピオン酸では27 %が,それぞれ除去された。次に除去率が高いのはナラ炭600 ℃であり,n-酪酸では38 %,iso-吉草酸では21 %,プロピオン酸では17 %であり,これら3種のVFAではカラマツ炭に対して6割から8割の値であった。酢酸の除去率については試料炭の間の違いは小さく,いずれも10 %程度であった。いずれの試料炭も水への溶出成分は微量であったことから,VFAの除去は主として試料炭による物理的吸着によるものと推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度から第2年度にかけては,バイオ炭の悪臭物質吸着能の評価について研究を行うこととなっており,悪臭物質吸着能についてはVFAの水溶液を用いた検討を行うこととしている。今年度は購入したGCによるVFA測定について,装置の諸設定や分析試料の調製法について検討を行ったうえで実際の実験に着手し,「研究実績の概要」にて述べたような知見も得ることができた。実験については手順が確立されたことから,今後は申請者が所有している既存の電気炉等を用いた装置により調整する新たな試料炭や市販のバイオ炭について,VFA除去率のデータを蓄積・比較検討していく予定である。このような状況から,進捗状況の区分を(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
バイオ炭の混合による堆肥化時の悪臭低減効果を検討するため,副資材の一部としてバイオ炭を加えた堆肥化実験を行う。本年度の結果から選定したバイオ炭を実験に供し,その混合量は段階的に設定する。反応槽からの排気については,臭気センサによる臭気測定や検知管を用いた臭気物質濃度を検討する。このことにより,排気中の臭気物質の減少と官能的評価を数値化する。また堆肥材料および堆肥化の進行度合いの異なる材料について,材料に含まれる低級脂肪酸濃度を測定し,バイオ炭の混合による悪臭低減効果を検証する。 また研究4年目に計画している堆肥化時に生じる可能性のある嫌気的条件領域の発生を想定した実験について,余剰となった材料を用いた予備的検討を同時に進めることとする。 以上のように,実際にバイオ炭を原料として混合した材料による堆肥化実験の準備を進めるが,堆肥化実験に必要となる試料炭の調製などの必要なる準備を順次進めていき,早めに堆肥化実験に着手できるよう努力する。
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Causes of Carryover |
2021年度の研究に供した試料炭は2020年度に調製したものが多かったため,これらの分析に要した消耗品費などの出費が抑制された。また,低級脂肪酸の分析に要した消耗品費についても実験の実施数が少なく,想定よりも低い額となった。今後はバイオ炭試料の材料となる樹種が異なるおが粉の購入なども考えていること,分析に必要となる試薬や器具費の増加が予想されることから,今年度までの未使用額はこうした物品の購入に充当する予定である。
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