2022 Fiscal Year Research-status Report
バイオ炭の混合による家畜排せつ物堆肥化時の悪臭低減
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20K06313
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
前田 武己 岩手大学, 農学部, 准教授 (40333760)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 堆肥化 / バイオ炭 / 家畜排せつ物 / 悪臭 / 低級脂肪酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
カラマツおが粉とその炭化物,乳牛ふん堆肥とその炭化物,籾殻と市販の炭化物について 乳牛ふん液相に相当するVFA混合液40 mLに炭あるいはその材料に相当する試料1.0 gを加えて吸着試験を行った。試験前後のVFA混合液 の濃度を測定して,試料1 g当たりのVFA吸着量を求めた。吸着量が最も多かったのは炭化温度が600 ℃のカラマツ炭であり,酢酸では1.9 mg/gが,プロピオン酸では4.6 mg/gが,n酪酸では3.9 mg/gが,iso吉草酸では0.3 mg/gが,それぞれ吸着された。乳牛ふん堆肥炭では,VFAの吸着量はさほど多くはないが,炭化温度の影響は小さかった。市販の炭化物については,籾殻くん炭が4種のVFAに対して,乳牛ふん堆肥炭と同程度の吸着能を有していた。 また,営利農場から採取した新鮮乳牛ふんを用いて,0,10,20,30 ℃にそれぞれ温度調節された恒温器内で密閉条件のインキュベーションを行い,酢酸,プロピオン酸,iso酪酸,n酪酸,iso吉草酸,n吉草酸を測定して,これらの総量をT-VFAとした。またpHおよびEC,アンモニア性窒素についても測定を行った。初期試料のT-VFA量は3 g/kg程度であり,酢酸,プロピオン酸が多くを占めていた。インキュベーション温度が20 ℃と30 ℃ではT-VFAは顕著に増加し,30 ℃の7日後では7 g/kgにまで増加した。試料ふんのpHは1日後から低下し,このpHの低下は温度が高い条件ほど大きく,30 ℃の7 日後では6以下にまで低下していた。こうした乳牛ふんを原料とした材料では,堆肥化を開始してもその直後は微生物活動が抑制され,材料温度の上昇に遅れが生じる可能性があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初計画では,初年度から第2年度にかけてバイオ炭の悪臭物質吸着能の評価に関する研究を行うことし,VFAの水溶液を用いた検討を行うこととしていた。第2年度には,実験手法の確立とデータ取得を行い,ほぼ目的の進捗だった。しかしながら,手法の一部見直しを行ったこと,一部新規の試料を対象として加えたことにより,吸着能評価試験を再度行うこととなり,研究計画から遅れが生じた。 また,対象とする家畜ふん尿に含まれる悪臭成分についても,当初は計画していなかったその変化の温度依存性についての検討を行うことしたこと,その実験期間中に所有の窒素分析装置の故障により代替器の購入が必要になったことなどが,当初計画からの遅れの要因となった。 さらには,年度当初より学内業務が想定外に増加して本研究のエフォート率を低下させざるを得なくなった。このような状況から,進捗状況の区分を(4)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により,原料ふん尿に含まれる悪臭成分としての低級脂肪酸(VFA)の推移と,それを堆肥化するときに副資材として利用されるおが粉や籾殻や臭気抑制のための添加剤としてのバイオ炭のVFA吸着量についてはデータが取得済みである。今後は,当初は第3年度からの実施が予定されていたバイオ炭の混合による堆肥化時の悪臭低減効果を検討するための実験にできるだけ早く取り掛かる予定である。堆肥化実験に必要な機材の準備は終えており,実験条件の検討を早急に行い,先ずは回分試験による実験に着手する。また,当初は第4年度に計画していた堆肥化時に生じる可能性のある嫌気的条件領域の発生を想定した実験についても,今年度内の実施を目指して実験条件当の検討を進める。
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