2021 Fiscal Year Research-status Report
可視ーテラヘルツ広帯域分光を用いた植物葉のイオン誘起水ストレス評価に関する研究
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20K06314
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
石川 大太郎 福島大学, 食農学類, 准教授 (20610869)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 水ストレス / イオン / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は昨年度に引き続き基礎的なイオン添加の影響を調査し、ストレス状態を可視化することを目的として、近赤外イメージングを用いたストレス状態の評価を試みた。近赤外イメージングは、我々の研究グループで開発したD-NIRsを用いて行った。同様に4000-100㎝-1の赤外ATRの測定をセルロースおよび植物葉に対して実施した。近赤外イメージング手法では、ストレス下にある植物葉の1400nm付近の二次微分スペクトルおよび1600nm付近との比をとることによりマッピングを行った。乾燥ストレス経過に対して植物葉の水分状態の分布が可視化可能となったが、塩ストレスに対する変化を明確に表すことにはつながらなかった。またストレス過程におけるクロロフィル量は大きな変化がなく含水率がスペクトル変化の要因である可能性が強まった。近赤外スペクトルの塩添加の基礎的な影響は、Na濃度をかえた水溶液から、濃度上昇とともに1400nm付近、1900nmのバンドは、長波長側が増加し、短波長側が低下する傾向があり、またK濃度の変化に対しては長波長側の強度が増加するのみであった。セルロースをディスク状として調湿することでその状態変化をイメージングした結果は含水率に対応した強度の上昇認められたが、内部構造に由来したバンドシフト等は近赤外領域のスペクトルからは見出すことができなかった。赤外ATRスペクトルでは、固体と水分子との相互作用に関与するバンドが高水分領域で高い波数側にシフトする傾向を確かめた。葉の乾燥過程では1160㎝-1および960㎝-1付近のバンドの高波数シフトが認められ、特に960㎝付近では高水分状態、低水分状態で強度は等しかった1160㎝-1付近は強度が水分量に対応して変化していた。これらの結果は、乾燥プロセスにおいて葉のセルロース構造も状態変化を起こしている可能性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イオン添加によるスペクトルへの影響が近赤外から遠赤外までの領域で基礎的に取得できたことからおおむね順調に進展していると考えられる。また近赤外イメージング技術を用いて葉の乾燥状態およびイオン添加による葉のストレス状態マッピングのための基礎的なスペクトルとして、1400nm付近が有用であることを見出した。基礎的に塩添加溶液で調査した結果遠赤外スペクトル(900cm-1以下)にはイオンによってスペクトル形状が異なる可能性を見出した。さらに赤外スペクトルからセルロースの状態変化の可能性が示唆され、塩添加に対しても同様のスペクトル処理を行うことで塩ストレスおよび水ストレスによる葉の物理的な状態評価手法に関する知見の蓄積につながると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
赤外スペクトルでは、1200㎝-1以下の低波数領域に複数のバンドが出現しそれらがストレス状態に伴って変化している可能性を見出した。これらの多くはセルロース由来のシグナルであるので、固体状態および固体と水との相互作用を明確化する上でこれらのバンドの詳細な解析は重要であると考えている。また、近赤外イメージングによって水分分布のみでなくセルロースの結晶状態の可視化の可能性が示されたことから、測定条件を最適化し、葉や植物体においても同様に可視化を行うことで、併発するストレス下における植物体の物理的手法による状態評価法の確立につなげていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初予定していたガラス器具およびマイクロピペットのチップ等の消耗品に対して予備品の利用が可能になったことから購入が不要になり次年度に繰り越し可能となった。
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