2020 Fiscal Year Research-status Report
環境水浄化型のバイオマス生産藻類工場ユニットの開発~低炭素社会実現に向けて
Project/Area Number |
20K06326
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
藤原 祥子 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (30266895)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 克彦 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (40301551)
佐藤 典裕 東京薬科大学, 生命科学部, 准教授 (50266897)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 微細藻類 / CO2固定 / 培養装置 / バイオマス / 環境水浄化 |
Outline of Annual Research Achievements |
CO2問題の解決のため、光合成によるCO2固定の利用、特に生育が速く食糧生産と競合しない微細藻類によるバイオマス燃料の生産が注目されている。本研究では、固相表面連続培養系を用いた微細藻類バイオマス生産ユニットを確立することを目的としている。初年度である今年度は以下の結果を得た。1.固相上での光合成速度を迅速かつ正確に評価するために、植物葉で広く用いられているIRGAで測定法を確立し、様々な条件でのクロレラ(Parachlorella kessleri)の光合成速度を検討した。その結果、高密度になるとCO2と光が律速となるが、CO2の方がより強い律速要因であることが明らかになった。支持体をグラスファイバーフィルターからタオルに変えて比較したところ、高密度での光合成速度は改善できたが低密度での速度は低かった。蛍光顕微鏡やSEMでの観察により、タオルでは細胞の分布は三次元的に広がっておりCO2の透過性は改善されたが光律速となっていると考えられた。2.液相から固相に移した際のクロレラの光合成特性の変化を調べた。12時間後には細胞当たりのクロロフィル(Chl)含有量および Chla/b比は減少したが24時間後までには回復したことから、強光や乾燥ストレスなどにより活性中心や LHCが分解されるがその後回復している可能性が考えられた。そこでPSIIの電子伝達特性をPAM 蛍光法で調べたところ、PSII自体はダメージを受けないが、下流の電子伝達の阻害により余剰エネルギーの熱放散が促進され、PSIIの実効量子収率が低下すること、しかしその後回復することが示された。3.シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803のP欠乏細胞を用いて培養液からヒ酸(100μM)の除去を試みたところ、毒性を緩和するリン酸の非存在下でも60分間以上ほぼ一定の速度で除去できることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IRGAを用いて固相上の藻類の光合成を正確に測定する方法を確立し、この系で最も大きな律速要因となっているCO2の供給を改善するためには支持体の三次元構造が重要であることを明らかにすることができた。また、細胞は固相上に移した直後はストレスを受けるが24時間以内には順応することが明らかとなり、現在その順応機構を明らかにするためにRNA-seqでの遺伝子の網羅的発現解析、qRT-PCRでの確認を進めている。さらに、培養液からのヒ酸の除去も一定速度で持続可能であることが実証できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果を基に、さらにCO2固定条件、環境水浄化条件の最適化とバイオマス成分の評価を進める。 ① CO2固定条件の最適化:CO2の透過性を改善するため、立体構造を付与できる固相素材を探索、もしくは表面加工により立体構造を構築する。 その他の培養条件(光強度及び波長と、栄養塩類の添加量及び添加時期)も検討し、 細胞増殖量の最大化を図る。培養装置の形状及び固相・光源の配置を最適化する。固相上の細胞量、流出細胞量及び強制離脱方法と細胞量の関係を調べて、totalの細胞回収量を向上させる細胞強制離脱方法を検討する。最適化された培養条件、細胞強制離脱方法で円柱型の装置を用いて、装置設置面積当たり200 g dry weight m-2 day-1の収量を目指す。また、装置稼働の自動化を目指す。 固相と液相での遺伝子発現の違いを調べる。固相で強発現する遺伝子について、その過剰発現により固相培養可能となる株が作製できないか検討する。また、代謝の流れの変化を予測し、③の物質生産への応用を検討する。 ② 環境水浄化条件の最適化:池の水もしくは工場排水を用いて主にリン、窒素そしてリンと同族のヒ素の回収・除去を行う。細胞としては幅広いリン濃度で生育可能なクロレラを用いるとともに、これまで報告してきたシネココッカスの特異性の異なるリン酸/ヒ酸トランスポーターの変異株やクラミドモナスの高リン蓄積株を用いる。 ③ バイオマス成分の評価:バイオマスについて、収量だけではなく、脂質・デンプンの量・質についても評価を行い、目的によって培養条件の修正を行う。たとえば、バイオディーゼル原料であるトリアシルグリセロールは窒素欠乏やリン欠乏条件で蓄積されることが知られているため、窒素・リンの浄化終了時に生産性が高くなっている可能性が高い。生育しながら生産できる条件を検討し、生産性の最適化を図る。
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Research Products
(8 results)