2021 Fiscal Year Research-status Report
環境水浄化型のバイオマス生産藻類工場ユニットの開発~低炭素社会実現に向けて
Project/Area Number |
20K06326
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
藤原 祥子 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (30266895)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 克彦 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (40301551)
佐藤 典裕 東京薬科大学, 生命科学部, 准教授 (50266897)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 微細藻類 / CO2固定 / 培養装置 / バイオマス / 環境水浄化 |
Outline of Annual Research Achievements |
CO2問題の解決のため、光合成によるCO2固定の利用、特に生育が速く食糧生産と競合しない微細藻類によるバイオマス燃料の生産が注目されている。本研究では、固相表面連続培養系を用いた微細藻類バイオマス生産ユニットを確立することを目的としている。2年度目である今年度は、環境水の浄化をしつつ培養を行う系の検討を行い、無機排水からのリン回収のための可搬型固相表面培養装置を開発した。先ず、培地を用いて条件を検討したところ、リン欠乏条件下においたクロレラ細胞ではリン十分細胞の場合の約70倍の速度でリン酸を取り込み、固相表面の細胞密度が20 g dry cell weight(DCW)・m-2以下の場合にはDCW当たりで液体培養とほぼ同じ速度でリン酸を取り込めること、固相面積当たりでは6 mg P・m-2・min-1の速度でリン酸を除去できることが示された。固相に保持された液体の体積は約1.5L・m-2であり、リン酸取り込み速度が飽和した固相表面の細胞密度は13g DCW・L-1と見積もられたことから、固相表面培養系は高いリン取り込み活性を維持しながら液体培養(0.5-6g DCW・L-1未満)よりも高い細胞密度で細胞を培養できることが示され、固相表面積当たりのリン取り込み速度を液体培養の池面積当たりのリン取り込み速度よりも高くできる可能性が示唆された。次に、この装置を用いて実際の排水からのリンの除去を検討したところ、エタノール製造工場由来の無機排水(4 mg・L-1)からも池の水(0.06mg・L-1)からも24時間以内に大部分のリンを除去することができ、細胞の生育も維持されることが明らかとなった。このことから、液体培養よりも容易にリン欠乏細胞を調製することのできるこの固相表面培養系では、バイオマス生産と排水処理の二元的活用が期待できることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
無機排水からのリン回収のための可搬型固相表面培養装置を開発し、実際に工場排水や池の水を用いて水の浄化を行いつつ培養できることを実証した。また、細胞は固相上に移した直後はストレスを受けるが24時間以内には適応することが明らかとなっていたが、その適応機構を明らかにするためにRNA-seqでの遺伝子の網羅的発現解析、qRT-PCRでの確認を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果を基に、さらにCO2固定条件、環境水浄化条件の最適化とバイオマス成分の評価を進める。 ① CO2固定条件の最適化:CO2の透過性を改善するため、立体構造を付与できる固相素材を探索、もしくは表面加工により立体構造を構築する。固相上の細胞量、流出細胞量及び強制離脱方法と細胞量の関係を調べて、totalの細胞回収量を向上させる細胞強制離脱方法を検討する。また、装置稼働の自動化を目指す。 固相で強発現する遺伝子について、その過剰発現により固相培養可能となる株が作製できないか検討する。また、代謝の流れの変化を予測し、③の物質生産への応用を検討する。 ② 環境水浄化条件の最適化:シネココッカスの特異性の異なるリン酸/ヒ酸トランスポーターの変異株やクラミドモナスの高リン蓄積株を用いて、池の水もしくは工場排水のリン及び同族のヒ素の回収・除去を行う。 ③ バイオマス成分の評価:バイオマスについて、収量だけではなく、脂質・デンプンの量・質についても評価を行い、目的によって培養条件の修正を行う。たとえば、バイオディーゼル原料であるトリアシルグリセロールは窒素欠乏やリン欠乏条件で蓄積されることが知られているため、窒素・リンの浄化終了時に生産性が高くなっている可能性が高い。生育しながら生産できる条件を検討し、生産性の最適化を図る。
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Research Products
(7 results)