2021 Fiscal Year Research-status Report
基質・生成物の可逆代謝能を利用した酢酸酸化細菌の網羅的分離培養および多様性解析
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20K06336
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
服部 聡 山形大学, 農学部, 准教授 (40373352)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 酢酸酸化細菌 / 還元的酢酸生成細菌 / メタン生成古細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では還元的酢酸生成細菌が保有する炭酸固定経路(Wood-Ljungdahl経路、WL経路)を逆方向に利用して酢酸を嫌気的に酸化する酢酸酸化細菌を対象として、分離培養によりこれらの細菌を取得することおよび、菌叢解析により多様性を明らかにすることを目的としている。本年度は前年度に引き続きハス泥炭から酢酸酸化細菌の候補細菌およびメタン生成古細菌の培養を試みた。山形県鶴岡市上池において、泥炭採取器により泥炭を垂直方向に採取し、酢酸酸化細菌あるいはメタン生成古細菌の生育基質存在下あるいは阻害剤存在下で嫌気的に培養を行うことにより、各種集積培養系を得た。これらの集積培養系から培養液を採取、ゲノムDNAを抽出後、16S rRNA遺伝子アンプリコン解析により集積培養系ごとに主要な微生物種の特定を行った。その結果、H2/CO2集積培養系において、還元的酢酸生成細菌であるSporomusa属やAcetobacterium属細菌の増殖が認められた。また、酢酸集積培養系においてはMethanoregulaceae科およびMethanosaetaceae科メタン生成古細菌が検出されると共に、Lachnospiraceae(Lcs)科細菌が系内の7割以上を占める等、顕著な増殖が認められた。Lcs科細菌は植物多糖類から発酵により脂肪酸を生成する絶対嫌気性の腸内細菌として知られているが、同科に属するある種の細菌はゲノム解析及び安定同位体解析の結果から、WL経路を保有している可能性が示唆されている。そのため、上記の酢酸集積培養系においては当該細菌がWL経路を逆方向に利用して酢酸酸化を行っている可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
独立栄養または従属栄養基質を用いることにより、酢酸酸化細菌の候補細菌(還元的酢酸生成細菌)の集積培養系が得られている。また、酢酸酸化細菌を直接取得するための酢酸集積培養系が得られている。特に酢酸集積培養系において見出されたLcs科に属する細菌については、同科内からの酢酸酸化細菌の報告例が皆無であることから、本研究の目的である系統的に新規な酢酸酸化細菌の発見に向けて進展しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
各種集積培養系から酢酸酸化細菌の候補細菌の純粋分離および活性評価を行う。特に酢酸集積培養系において見出されたLcs科に属する細菌について重点的に研究を進める。
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