2021 Fiscal Year Research-status Report
生物学的汚水処理水を極限まで清浄化する光触媒・ダイヤモンド電極併用槽の構築
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20K06352
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
鈴木 智順 東京理科大学, 教養教育研究院野田キャンパス教養部, 教授 (50256666)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 光触媒 / ダイヤモンド電極 / 汚水処理 / 殺菌 / 細菌叢解析 / トリハロメタン / 低環境負荷 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は光触媒二酸化チタンとホウ素をドープしたダイヤモンド電極(BDD電極)を併用した生物学的汚水処理水の低環境負荷な酸化剤生成槽の構築を目的としている。昨年度、BDD電極を4 Vの定電圧を実験条件として生物学的汚水処理水への有機物分解性能評価を行うと、有機物は処理24時間後で80%が分解された。また、この処理で殺菌されない耐性菌として、Bacillus属およびEnterococcus属細菌が検出された。そこで今年度は昨年度の結果を受けて、耐性菌であるEnterococcus属細菌株の分離を行い、この株に対する殺菌効果を検討した。しかし、実験を進めていく中で、定電圧による電極反応に起因する実験データのブレが見られる問題が生じた。そこで、この問題を解決するために、定電流で実験を行うこととし、酸化剤生成槽の実験条件検討を再度行った。そして、最適電流値は、定電流条件下での酸化剤生成槽におけるトリハロメタン(クロロホルム)生成量と有機物分解率を評価して総合的に判断した。 耐性菌のうち、分離されたグラム陽性球菌1株に対して、16S rRNA遺伝子塩基配列に基づいた系統解析の結果、この分離株と最も近縁な細菌はEnterococcus thailandicusで、相似値は100%であった。また、酸化剤生成槽のクロロホルム生成量および有機物分解率は、電流値が大きくなるほど増加する傾向が示された。この結果から判断して、24時間でクロロホルムの生成量が低く、約75%の有機物除去率を得た、30 mAを酸化剤生成槽の実験条件とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の酸化剤生成槽では、BDD電極に4 Vの定電圧をかけて生物学的汚水処理水の有機物分解性能評価を行うと、有機物は24時間で80%分解されたことが示された。また、この槽内の細菌叢解析をMinIONで行ったところ、この処理で殺菌されない耐性菌としてBacillus属およびEnterococcus属細菌の存在が確認された。しかし、定電圧条件による電極反応に起因する実験データのブレが見られることから、常に一定の電流を供給することができる定電流で実験を行うこととし、酸化剤生成槽の実験条件の検討を今年度再び行った。 存在が確認された耐性菌のうち、Enterococcus属細菌を分離するため、乳酸菌選択培地を使用してグラム陽性球菌が1株分離された。この分離株の16S rRNA遺伝子塩基配列に基づいた系統解析を行った結果、この分離株とEnterococcus thailandicusの基準株とは100%の相似値であった。最適電流値は環境汚染物質であるクロロホルムの生成量と有機物分解率とを総合的に評価して決定した。電流を多く流すほど、クロロホルム生成量および有機物分解率が増加する傾向が見られた。そして、処理を開始して24時間後で、クロロホルムの生成量が低く、約75%の有機物分解率を得た、30 mAに電流値を決定した。そして、決定した最適電流値を使用して、光触媒・BDD電極併用処理で殺菌されない耐性菌が出現するか、改めてその確認実験を行っているところである。 今年度は主に、酸化剤生成槽でのクロロホルム生成量の測定と耐性菌叢解析の完了が実験計画上の予定であったが、後者は現在行っているところである。計画に少し遅れが生じているが、定電流での実験条件が本年度に決定できたことで、安定した実験結果が得られる酸化剤生成槽を構築することができたことから、今後の実験計画に対しての支障は少ないと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、再設定した酸化剤生成槽では、30 mAの定電流条件において約80%の有機物除去率が得られており、昨年度と比較して、同等の有機物分解率が得られた点や、安定した実験データを得られるようになった点から、今年度の研究によって酸化剤生成槽はより改善されたものとなった。 今後の本研究の課題としては、運転条件を再設定した酸化剤生成槽での耐性細菌叢の解析と耐性細菌の分離、その耐性細菌株を用いた殺菌性能評価である。殺菌性能評価を行うことで、本研究の酸化剤生成槽の有用性および、耐性細菌が出現する原因解明の手がかりを得たいと考えている。 また、昨年度の研究課題として挙がった有効遊離塩素が光触媒反応によって減少するメカニズムの解明も今後の研究課題として挙げられる。光触媒反応によって有効遊離塩素はどのように変化して減少したのか、そして併用処理によって有効遊離塩素が減少しているのにも関わらず、有機物分解率, 殺菌効率が上昇する原因は何であるかを解明することによって、さらなる酸化剤生成槽の改良を行い、最終的には本槽での有機物の完全分解と完全殺菌を目指したいと考えている。
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