2020 Fiscal Year Research-status Report
原発事故帰還困難区域で飼育されている牛の健康状態ならびに食肉の安全性に関する評価
Project/Area Number |
20K06357
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
佐藤 至 岩手大学, 農学部, 教授 (60225919)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 福島第一原発事故 / 放射能汚染 / 牛 / 放射性セシウム |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年9月に定期調査を行い,牛の採血および空間線量の測定を行なった。血中放射性セシウム濃度は高線量牧場で平均132Bq/kgで,その95%がCs-137であった。低線量牧場の牛は全て検出限界未満であった(<5Bq/kg)。血液検査の結果,高線量牧場の牛に異常を示す個体は見られなかったが,低線量牧場では[低コレステロール,高遊離脂肪酸,高ケトン体]が1頭,[高BUN,高遊離脂肪酸,高ケトン体,高AST,高顆粒球]が1頭,[低アルブミン,低リンパ球,貧血]が1頭認められた。空間線量は高線量牧場でおよそ7μSv/h,低線量牧場で0.3μSv/hであった。 緊急調査は4回,計6頭の剖検を行なった。このうち4頭(高線量牧場1,中低線量牧場3)が牛伝染性リンパ腫(牛白血病),1頭(低線量牧場)が脂肪壊死,1頭(低線量牧場)が栄養不良と診断された。伝染性リンパ腫を発症した4頭のうち1頭は直近の血液検査で高BUN等の異常が見られたが,リンパ球数は正常であった。他の3頭の血液検査結果に異常は見られなかった。一方,脂肪壊死であった牛は直近の血液検査で[低コレステロール,高遊離脂肪酸,高ケトン体]を呈し,栄養不良であった牛は[低アルブミン,低リンパ球,貧血]を呈しており,健康状態が悪化する兆候であったと考えられた。 昨年度の調査結果において高線量牧場の牛で異常が多発しているという事実はなく,むしろ逆であった。現時点では被曝の影響を示唆するものは認められないものの,被曝の影響について結論を導くためにはさらに長期的な調査観察が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
牛からの採血や空間線量の測定を行う「定期調査」は春と秋の年2回を予定していたものの,新型コロナウィルス感染症の影響(県外出張の禁止等)のため1回目の調査が9月にずれ込み,2回目の調査は断念せざるを得なかった。なお,採取した血液については予定どおり生化学的検査,血球数検査および放射性セシウムの測定を行なった。 一方,予後不良と判断された牛の剖検等を行う「緊急調査」は4回実施し,計6頭の診断を確定した。しかし,現地入りができないために,現地の臨床獣医師に安楽殺を依頼せざるを得ないこともあった。
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Strategy for Future Research Activity |
計画どおり今後も年に2回の定期調査に加え,異常牛が発生した時に随時緊急調査を行い,データを蓄積する。ただし,新型コロナウィルス感染症の蔓延により県外移動が制限された場合には,それにしたがって調査の時期を移動し,あるいは回数を減らさざるを得ないこともありうる。
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Research Products
(1 results)