2023 Fiscal Year Research-status Report
原発事故帰還困難区域で飼育されている牛の健康状態ならびに食肉の安全性に関する評価
Project/Area Number |
20K06357
|
Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
佐藤 至 岩手大学, 農学部, 教授 (60225919)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 被曝 / 牛 / 福島第一原発 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年4月時点での牛の飼養頭数は,高線量牧場で34頭,低線量牧場で17頭であった。高線量牧場において起立不能等の異常により4月27日に2頭,5月11日に1頭の剖検を行い,うち2頭は牛伝染性リンパ腫(白血病)と診断された。残り1頭は心不全と診断されたが,この牛は18歳と高齢であったため,その影響の可能性が示唆された。 定期調査は6月と12月に行い,駆虫薬の塗布ならびに望診および採血による検査(血球数,血液生化学,放射性セシウム)を行なった。血中Cs-137濃度は,除染済みの低線量牧場では6月も12月も約2Bq/kgであったが,高線量牧場では6月に55Bq/kg,12月に88Bq/kgと,明確な季節変化が認められた。血液性化学検査では,前年に引き続き軽度の肝機能低下が疑われる個体が居たものの,顕著な異常は認められなかった。血球数の検査において,両牧場ともに貧血傾向の個体および低リンパ球の個体が散見される一方で高リンパ球を呈する個体も見られたが,この傾向は以前から続いているもので,病的な異常とは考えられなかった。なお,剖検によって伝染性リンパ腫と診断された2頭については,過去の血液検査でリンパ球数その他の異常は認められていなかった。一方,前年12月の調査では高線量牧場の牛に低BUNを示す個体が多くみられ,飼料の不足が示唆されていたが,今年度の検査でBUNの異常は見られなかったことから,栄養状態は改善されたものと考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
5月に新型コロナウィルス感染症が5類に移行したことから,定期調査を予定どおり春と秋の年2回行い,生化学的検査,血球数検査,塗抹検査,および放射性セシウ ムの測定を行ない,牛の健康状態を把握した。体調に異常を呈した牛が出た場合には緊急調査を行うこととしているが,昨年度はそのような牛が3例あり,全て剖検して2例を牛伝染性リンパ腫(牛白血病)と確定することができた。2020年 と2021年は新型コロナウィルス感染症の影響により予定よりも調査回数が少なかったものの,2022年以降は概ね通常の活動ができるようになり,研究に大きな支障は生じて いない。
|
Strategy for Future Research Activity |
計画どおり今年も年2回の定期調査を行うとともに,異常牛が発生した場合には緊急調査(剖検等)を行い,データを蓄積する。緊急調査についてはあらかじめ 予定を立てることができないため実施できないこともあるが,可能な限り早期の異常発見と連絡を畜主にお願いし,異常牛の原因究明に努める。 今年は現科研費の最終年度にあたるが,調査対象農場の牛はまだ48頭残っている。これらの牛を最後まで観察し,長期被曝の影響を評価するため,本研究テーマの継続による科研費の獲得を目指す。
|
Causes of Carryover |
理由:使用額を予算額と完全に一致させることができないため。 使用計画:少額であるため,翌年度予算と合わせて使用する。
|
Remarks |
申請者が所属し,福島第一原発事故の被災地での研究活動の母体となっている研究組織のHP
|
Research Products
(1 results)