2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of nutritional function of native plant resources by analysis of intra-ruminal environment and rumen digestion
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20K06358
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小倉 振一郎 東北大学, 農学研究科, 教授 (60315356)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 放牧牛 / 植物多様性 / ルーメン消化 / ルーメン微生物叢 / 採食植物種 / 次世代シーケンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,多様性が異なる植生下で放牧されるウシの採食植物種の多様性とルーメン内および糞中細菌群集の多様性を比較した。東北大学川渡フィールドセンター(宮城県大崎市)の山地放牧地(草地3 ha+林地17 ha)およびイネ科牧草地(5 ha)に5-10月に放牧した黒毛和種成雌牛のうち、各放牧地の4頭を供試個体とし、調査を初夏と秋に行った。ウシにGPSと運動強度計を装着して採食場所と時間を調査し,個体追跡により採食植物種を記録して植物種別採食量を推定した。放牧終了後は全個体に1か月間サイレージを給与した。両季節の調査終了時とサイレージ給与時にルーメン内容物(固相と液相)を採取し,各試料について16S rRNA V4領域のアンプリコンシーケンスを行った後、QIIME2を用いて細菌群集構造解析を行った。採食植物と細菌群集の多様性はShannon-Wienerの多様度指数(H’)を用いて評価した。 ウシはイネ科牧草地ではレッドトップ、メヒシバ、サギゴケ、トールフェスク等11-18種を、山地放牧地ではハルガヤ、ミノボロスゲ、シバ、ツルアジサイ等56-71種を採食した。採食植物のH’は両季節ともイネ科牧草地<山地放牧地となった(p<0.05)。山地放牧地とイネ科牧草地のルーメン内および糞の細菌群集構造の類似度を比較したところ、両季節とも放牧地間で異なる傾向が認められた(p<0.10)。細菌群集のH’をみると、ルーメン内容物固相では両季節とも山地放牧地で高く(p<0.05)、液相では秋に山地放牧地で高かった(p<0.05)。全供試個体にサイレージを給与した場合、細菌群集構造および多様性に有意差はなかった。以上より、植物が多様な放牧地ではウシの採食植物が多様になり、ルーメン内細菌群集の多様性が高まる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目は新型コロナウイルスの影響を受け、調査内容を一部縮小せざるを得なかったが、概ね当初の計画通り実行することができた。今年度調査を行うことができなかった項目は、放牧牛の主要摂食植物種の化学成分分析、および放牧牛のルーメン液の緩衝能,ミネラル濃度,発酵産物(揮発性脂肪酸等)濃度およびルーメン微生物量である。これらについては、2-3年目に調査する予定である。 また、山地放牧地および牧草放牧地で放牧飼養されているウシのルーメン液を用いたin vitro消化試験によるルーメン消化能の解析についても、今年度実験方法を確認するための予備実験を行う予定であったが、あいにく新型コロナウイルス感染拡大に伴う研究活動の制限により実施には至らなかった。これについても次年度に試行する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目には,1年目と同様に,5-10月にかけて山地放牧地(草地3 ha+林地17 ha)およびイネ科牧草地(5 ha)に黒毛和種成雌牛を放牧し、植生調査,採食植物種と採食行動の調査,およびルーメン内容物採取を初夏と秋に行い,菌叢解析を行う。その際,1年目に実施できなかったウシの主要採食植物種の化学成分を分析するとともに、ルーメン液のpH、緩衝能,揮発性脂肪酸濃度を分析する。また、ルーメン内容物(固相と液相)と直腸糞のDNA分析については、細菌叢に加えてプロトゾア組成の解析も試みる。 ウシのルーメン液を用いたin vitro消化試験によるルーメン消化能の解析については2-3年目に実施する。山地放牧地および牧草放牧地で放牧飼養されているウシからルーメン液を採取し,イノキュラムとする。上記1で得た家畜の摂食植物種の結果をふまえ,消化試験に用いる植物種(材料植物種)として摂食された主な植物のうちイネ科牧草,マメ科牧草,イネ科野草,広葉野草,木本から1種ずつ選び,ウシ可食部を放牧地から採取して乾燥,粉砕(1 mm)し,in vitro法で消化実験を行い,ルーメン内消化性を経時的に測定する。「ルーメン液の違い(=放牧地植生の違い)」と「材料植物種」の効果および両者の交互作用を検証し,植物種多様性の高い放牧地で得られたルーメン液の植物茎葉の消化能を評価する。また,消化試験終了時に消化液のpHおよび緩衝能を測定した後に一部を採取し,発酵産物濃度を測定するとともに微生物叢解析を行う。
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Causes of Carryover |
申請時に購入を検討していた超低温フリーザよりも小容量でも研究サンプル保管には十分であることを確認し、かつ安価な機種を購入できたため、購入経費が減少した。また、新型コロナの影響により当初実施を計画していたウシ採食植物種成分分析等を実施しなかったことによるサンプル送付料金および分析委託にかかる費用が執行されなかった。さらに、当初計上していた成果発表(学会参加)旅費についても、オンライン開催となったため執行されなかった。 翌年度は、菌叢解析に必要なキットや物品購入(640千円)をはじめ、当該年度に実施できなかったルーメン発酵産物濃度測定物品(80千円)、in vitro消化実験器具(50千円)、主要植物種成分分析(外部委託)(160千円)等を実施予定しており、また新型コロナが収束すれば成果発表(国内70千円、国外200千円)のための旅費が必要なため、これらで概ね使用される見込みである。
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Research Products
(1 results)