2020 Fiscal Year Research-status Report
オミクスによるウシルーメン環境概日リズムの解明とルーメン発酵安定化への応用
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20K06363
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
上野 豊 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (00542911)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
正木 達規 兵庫県立農林水産技術総合センター, 畜産技術センター, 上席・主任研究員 (20762701)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | メタボローム解析 / 概日リズム / 反芻動物 / 微生物環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的と方法】ウシやヒツジなどの反芻動物では、ルーメン内に存在する嫌気性微生物の働きにより生成される短鎖脂肪酸(VFA)をエネルギー源として利用している。安定した発育や生産性を得るためには、ルーメン発酵の安定化が重要であるという理解が進んでいる。令和2年度本研究では、ルーメン微生物叢と代謝産物の同時解析により、ルーメンの発酵状態と相関があり、容易にモニタリングが可能である指標化合物(焦点化合物)の絞り込みを目指した。研究分担者所属機関において肥育後期黒毛和種去勢牛3頭から、1か月おきに1日2回、フィステルを介してルーメン液を採取した。採取ルーメン液から細菌ゲノムDNAを抽出し、次世代シーケンシングによる微生物構造解析を実施した。また、各ルーメン液サンプルのVFA濃度をHPLCで測定し、LC-MSによる胃液のメタボローム解析を行った。 【結果と考察】給餌後5時間(21時)では飼料の微生物発酵による有機酸生成が亢進した一方で、朝給与直前(翌朝9時)では有機酸とアミノ酸の代謝が亢進した。このように、給餌後の時間経過に依存したルーメン内代謝物構成の変動を明瞭に示すことができた。いくつかの細菌グループについて9時と21時の相対存在量が有意に異なっており、VFA量にも有意な変化が認められた。これらの結果は給餌時刻からの経過時間の違いが反映されたと考えられる。21時に増加していたのは繊維や糖類を分解するルーメン主要細菌で、給餌後の飼料分解に関与した結果VFAが生成され、VFA量も21時に増加した。ペプチドまたはアミノ酸を利用するグループは9時に多く、このことからアミノ酸や有機酸の代謝は二次的に起こると考えられる。以上から、微生物代謝によるルーメン液中アミノ酸組成のプロファイル化で発酵の逐次モニタリングが可能であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特筆なく飼養試験とその後の分析を行うことができており、今後についても研究分担者とよく連携して飼養試験準備状況に問題はない。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度飼養試験結果を踏まえ、当初計画に沿って第2回の肥育牛飼養試験を実施する。 焦点化合物を含めた、複数の測定対象化合物のルーメン液中濃度日内変動を評価するための試験を実施する。この際、日内の発酵変動の影響を捉えられるように、飼料給与回数を変化させた試験を実施する。研究分担者機関において飼養試験(但馬牛フィステル装着牛・12頭)を行い、肥育前期(12か月齢)~肥育中期(22か月齢)のなかでルーメン液を2か月おき、都度1日当たり6回の採材を行い、微生物構成と、測定対象化合物のモニタリングを行う。介入による微生物群集構成と化合物濃度の日内変動と個体パフォーマンス(増体、飼料効率)の結果とを合わせて考察し、よりルーメンへの負担が少なく、動物にとっての負荷も低減できる飼養管理方法を提案する。
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Causes of Carryover |
研究分担者所属機関を訪問しての研究打ち合わせ、現地試験の予定を次年度に繰り越したために次年度使用額が生じた。当年度内に訪問を予定し、また、予算執行可能状況に応じて分析点数を適宜増減する。
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