2021 Fiscal Year Research-status Report
オミクスによるウシルーメン環境概日リズムの解明とルーメン発酵安定化への応用
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20K06363
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
上野 豊 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (00542911)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
正木 達規 兵庫県立農林水産技術総合センター, 畜産技術センター, 上席・主任研究員 (20762701)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | メタボローム解析 / 概日リズム / 反芻動物 / 微生物環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的と方法】ウシやヒツジなどの反芻動物で安定した発育や生産性を得るためには、ルーメン発酵の安定化が重要であるという理解が進んでいる。令和3年度本研究においては、前年度取得した分析データ解析を行い、モニタリング可能な指標化合物(焦点化合物)の特定を試みた。並行して、焦点化合物を含めた複数の測定対象化合物のルーメン液中濃度日内変動を評価した。この際、日内発酵変動の影響を捉えられるように、飼料給与回数を変化(毎日1回、2回、または4回)させた試験を実施した。研究分担者機関において但馬牛フィステル装着牛・12頭を用いて試験を行い、肥育前期(12か月齢)~中期(22か月齢)のなかでルーメン液を4か月おき、都度24時間あたり7回採材した。採取ルーメン液から細菌ゲノムDNAを抽出し、次世代シーケンシングによる微生物構造解析を実施した。また、ルーメン液VFA濃度を測定した。 【結果と考察】胃液メタボローム解析結果を再検討したところ、時間帯によってアミノ酸プロファイルが異なっており、発酵のモニタリング指標として利用可能性があると考えられた。飼養成績では、飼料摂取量および発育において区間差が認められなかった。肥育前の育成段階から段階的に濃厚飼料割合が高まるにつれウシが適応可能な代謝機能を有し、ルーメン環境の大きな変動も許容できていると考えられる。胃液サンプルの分析結果について、1日1回給与区では、ルーメン液VFA総量とその組成、および細菌叢構成について大きな日内変動が見られた。一方で2回給与区、4回給与区では、どの指標も1日を通じて安定していた。これらのことから、1日1回の飼料給与では、個体それぞれが持つ細菌叢によって、時間帯によっては偏った胃内発酵(微生物による基質消費)が生じるが、給与回数を増やすことによって、時間による変動の少ない安定した胃内発酵となることが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特筆なく飼養試験とその後の分析を行うことができており、今後についても研究分担者とよく連携して飼養試験準備状況に問題はない。
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Strategy for Future Research Activity |
第2回肥育牛飼養試験とサンプリングを継続し、出荷月齢近くまでの変動データを蓄積する。得られたデータをもとに、給餌回数の違いに基づく微生物群集構成と化合物濃度の日内変動と個体パフォーマンス(増体、飼料効率)の結果を合わせて考察し、よりルーメンへの負担が少なく、動物にとっての負荷も低減できる飼養管理方法を提案する。
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Causes of Carryover |
研究分担者所属機関を訪問しての研究打ち合わせ、現地試験の予定を次年度に繰り越したために次年度使用額が生じた。当年度内に訪問を予定し、また、予算執行可能状況に応じて分析点数を適宜増減する。
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Research Products
(2 results)