2021 Fiscal Year Research-status Report
Novel cryodevices for vitrification of cumulus-oocyte complexes and pancreatic islets
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20K06364
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
保地 眞一 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (10283243)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 膵島移植 / ガラス化保存 / シルクフィブロイン / VEGF / 脱細胞化組織 / スフェロイド培養 / 偽膵島 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵臓において血糖値抑制の主役を演じる細胞 (β細胞) 以外にも多種多様な機能をもつ細胞群から構成され、それらが協同して働くことを特徴とする細胞塊の膵ランゲルハンス島 (膵島) を用いて、生体適合性の高い素材からなるガラス化保存の新規デバイス開発を目指す研究を展開した。前年度、ラット膵島のガラス化保存において、ナイロンメッシュに代わるデバイスとして多孔質シルクフィブロインスポンジディスクが有用であることを、in vitroの評価系のみならずin vivoの実験系を立ち上げてIslets誌に報告した。今年度さらに、加温後の膵島を同デバイスから回収することなく腎被膜下へ膵島のスキャフォルドとして血管内皮増殖因子 (VEGF) とともに直接移植できることがわかり、この成果をCryopreservation Conference 2021でオンライン発表するとともに、Transplantation Proceedings誌に公表した。また、酵素消化による膵島単離過程やガラス化工程で損傷を受ける膵島周囲の微小環境の修復を目指した研究では、高静水圧処理により調製した肝臓の脱細胞化組織との共培養が新鮮膵島ならびに加温膵島のインスリン分泌機能を亢進することも明らかにし、この成果をCryobiology誌に公表した。さらに、全単離膵島の移植への効率利用ならびに加温膵島の高品質化を目的に、膵島をトリプシン処理して単一細胞懸濁液にしてからスフェロイド培養することにより偽膵島を再構築する技術を利用したところ、加温膵島由来の偽膵島は新鮮膵島と同等の生存性・機能性を持つことに加え、グルカゴン分泌α細胞とインスリン分泌β細胞が本来の場所に正しく再配置されてくることも観察し、この成果をJ Tissue Eng Regen Med誌に公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
人類未曾有の新型コロナ感染症拡大の影響下でほとんど学会発表の機会を与えられなかったこと (学会発表件数1件のみ) は研究成果を積んだ学生の教育的視点から見るとよかったとは言えないが、代わりに論文執筆に多くの時間を割くことができた。その結果、ウシ卵子とラット膵島の両輪を研究対象として走らせている本研究課題において、膵島テーマだけで目標 (年1編の論文公表) を大きく上回る3編の研究論文を公表することに成功した。1編目は「糖尿病モデルラット1匹への最低必要膵島移植数550個をシルクフィブロイン製デバイス1枚に搭載してガラス化・加温した後、そのデバイスに新生血管誘導のアシストが期待されるVEGFを補填し、膵島を回収することなくそのデバイスごと腎被膜下に移植した。その結果、VEGFを補填した場合にのみ、3割以上のレシピエントラットが正常血糖値に回復した (Yamanaka et al., 2021)」というものである。2・3編目はin vitroの評価系だけでまとめたもので、それぞれ「高静水圧処理により脱細胞化したラット肝臓を膵島微小環境修復用の細胞外マトリクスとして新鮮単離膵島または加温膵島の培養液に添加したところ、インスリン分泌能が有意に改善された (Nakayama-Iwatsuki et al., 2021)」、「ガラス化・加温膵島由来の偽膵島は新鮮膵島と同等の生存性・機能性を持ち、グルカゴン分泌α細胞とインスリン分泌β細胞が新鮮膵島のように再配置されていた (Nakayama-Iwatsuki et al., 2021)」というものである。その他、ASJ誌から執筆依頼を受けて、ウシ未受精卵子のガラス化デバイスに関する総説記事1編を著した (Hochi, 2022)。
よって、「当初の計画以上に進展している」と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
膵島テーマは大学院生2名によって牽引されていたが、リーダー格の博士課程大学院生 (T. Yamanaka) がチームを離脱したこと (課程修了2021年3月)、ならびにもう1名の大学院生 (K. Iwatsuki) の主担当テーマを幹細胞生物学へ拡大 (変更) したことにより、研究進捗の失速が懸念されている。今後取り組んでいくのは、(1) シルクフィブロイン製スポンジディスクの物性ならびに生分解性を評価し、サイトカイントランスポーターかつスキャフォルドとしてもより有効なガラス化デバイス形状に改良して移植膵島の生着率を上げ、糖尿病モデルラットの血糖値正常化に寄与するようにすること、及び (2) 偽膵島作製系をさらに高度化する方法論を確立し、適正サイズかつ機能的高品質にするために間葉系幹細胞等を混ぜ込んだり、ラットES細胞株からin vitroでβ細胞に分化誘導したりすることで偽膵島を作製し、機能評価することである。さらに、膵臓形成のマスター遺伝子であるPdx-1をノックアウトしたラット胚盤胞をES細胞で補完して膵臓を量産することに挑戦する準備も始める。また精子・卵子を対象とするテーマでは、「凍結保護物質をいっさい含まない生理的塩溶液に精子を懸濁してガラス化しても、加温速度を超高速化することさえできれば個体発生に資することができる正常な精子を回収できる」という仮説を、ウシモデルにおいて顕微授精後の胚盤胞発生率や品質、ならびに精子DNAの損傷率を調べることによって証明する。
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Research Products
(6 results)