2021 Fiscal Year Research-status Report
ウシのヘプシジン(鉄代謝調節ホルモン)発現制御機構の特異性解明
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20K06365
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
舟場 正幸 京都大学, 農学研究科, 准教授 (40238655)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 徹 京都大学, 農学研究科, 教授 (40181680)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 畜産学 / 栄養学 / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
肉牛の鉄代謝は特徴的である。哺乳子牛は貧血に罹患しやすく、また、離乳以降の肉牛は鉄過剰に陥りやすいと考えられる。マウスやヒトでの知見を基に、全身の鉄代謝はヘプシジンによって調節されていることが明らかにされている:鉄過剰により肝臓でBMP6が産生され、これがヘプシジン転写を促進し、産生されたヘプシジンが鉄の腸管吸収を抑制し血中鉄濃度は負に制御される。研究代表者らは、哺乳子牛において血中ヘプシジン濃度は鉄濃度の変化と連動しないこと、BMPに対するウシヘプシジン転写亢進の程度は、マウスヘプシジンよりも小さいことを見出している。これらの結果は、ウシの鉄代謝調節を理解するうえで、マウス・ヒトの知見は適切ではないことを示唆する。本研究は、肉牛を使った動物試験、ならびに、細胞培養試験を通して、ウシのヘプシジン発現制御がマウス・ヒトのそれと異なる点を明確にするだけでなく、ウシ固有のヘプシジン転写機構解明を目的としている。 研究二年度は、研究初年度に引き続き、鉄補給が子牛の血中ヘプシジン濃度変化に及ぼす影響を検討するためのサンプリングを実施した。3-6産次の母牛から生まれた10頭の子牛を供試できた。また、研究初年度に引き続き、肥育牛における鉄代謝関連遺伝子発現ならびに鉄濃度を検討するため、食肉市場に出荷された黒毛和種肥育牛の肝臓サンプルを採取し、一部解析に着手している。これまでにヘプシジン発現はIL-1βによっても上昇することを見出しているが、ウシ肝臓由来細胞ではIL-1βによってヘプシジン発現増は起きないこと、これは転写亢進が起きないことが原因であることを突き止め、その責任配列・分子の特定を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した課題は概ね着実に進行している。鉄補給が初生子牛の血中ヘプシジン濃度変化に及ぼす影響を検討するためのサンプリングは着実に進行している。また、食肉市場に出荷された肥育牛からの肝臓サンプルを採取も順調になされている。ウシ肝臓由来細胞ではIL-1βに対してヘプシジン発現が増加しない現象、これは転写レベルでの制御であることは、明らかにヒト細胞やマウス細胞での知見と異なり、ウシ特有の発現調節機構の存在を示している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、初生子牛の血液サンプル、肥育牛の肝臓サンプルの確保に努めると同時に、これまで得たサンプルの解析を完了する。また、ウシヘプシジンレポーターを用いて、新たに見いだしつつあるウシ固有のへプシジン転写調節機構の詳細な分子機構を検討する。
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