2020 Fiscal Year Research-status Report
不凍タンパク質を利用した低温牛胚保存法による牛胚移植の高度化
Project/Area Number |
20K06370
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
阪谷 美樹 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 上級研究員 (00355687)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 凍結保存 / 牛胚 / 不凍タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
効率的な子畜生産のためには、胚移植の活用が有用であるが、凍結保存胚の移植は日本では盛んではない。その理由として凍結保存胚移植の受胎率が新鮮胚と比較し低く、輸送・保存を含めた凍結胚の取扱いが新鮮胚と比較し煩雑であることが考えられる。本課題では汎用性が高くかつ受胎性の高い胚保存法を作出することを目的に不凍タンパク質(AFP-III)を利用した牛胚の低温-30℃保存について検討している。 令和2年度はAFP-IIIを利用した牛体外受精胚の耐凍結性を評価するため、緩慢凍結法による液体窒素内保存と-30℃保存におけるAFP-III添加効果を検討した。食肉処理場由来牛卵巣より卵子を採取し、常法に従い体外受精・発生培養を実施した。体外受精後7日目に胚盤胞に達した胚に関し、AFPを添加しないcontrol, AFP-III 0.1, 0.5, 1.0μg/mLを添加した発生培養液にて1時間 38.5℃ 5% O2, 5% CO2にてpre培養した後、AFPを添加しないcontrol, AFP-III 0.1, 0.5, 1.0μg/mLを添加した5%エチレングリコール、6%プロピレングリコール、0.1Mスクロース、4mg/mL 牛血清アルブミンによって構成される凍結液にてプログラムフリーザーを用い、-0.3℃/minの冷却速度で-30℃までの緩慢凍結を行った。凍結後、液体窒素タンクまたは-30℃のフリーザーにて凍結し、保存後24~48時間後に融解し、生存性を検討した。 AFPIII添加pre培養による胚の形態への変化へ認められず、AFPの毒性等は認められなかった。液体窒素保存区では、AFP1.0μg/mLで融解後24時間後の胚の生存性は89%であり、control区(49%)と比較して有意に高い結果となったが、-30℃保存では融解後24時間後の生存性は対照区を含めどの区でも非常に低くAFPの添加効果は認められなかった。今年度は例数が少なかったため、次年度以降は例数を含め、凍結液、AFP濃度を含めた検討をさらに重ねる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナウイルス感染症の影響により、食肉処理場での卵巣採取が実施できない時期が続いたこと、さらに感染防止のため在宅勤務が実施され、研究所における実験業務が実施できなかったため、体外受精胚における検討が予定通り進まなかった。そのため、条件設定に関する研究の進捗がやや遅れ気味である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は食肉処理場由来体外受精胚を用い、年度の前半に低温保存-30℃に適した凍結条件の設定を目指す。具体的には、液体窒素保存より高いAFP濃度(10-100μg/mL)とエチレングリコール、プロピレングリコールの細胞毒性のある耐凍剤の濃度を20-50%程度低くした条件での生存性の高い凍結液設計を試みる。また、保存期間を24時間→7日→30日と延長し、比較的長期間保存での生存性の検討を重ね、融解後胚の発生能に関しても分子生物学的解析を実施する。また、液体窒素保存に関してもAFP添加によるより生存性の高い保存条件を明らかにする。 年度末には上記によって設定された条件で凍結した体外受精胚を生体に移植し、その受胎性を確認する予備試験を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症の影響により、体外受精試験が実施できない時期が続き体外受精試験用資材の購入が行われなかった。参加予定だった学会もオンライン開催となり旅費が生じなかった。また当初予定していた物品(超音波診断装置)が補助金のみでの購入ができず、購入を見送ったため助成金の残が生じた。次年度はR2年度分の体外受精実験を実施する計画であり、体外受精実験資材並びに分子生物学的解析のための資材購入が必要とされるため、前年度残額を次年度に繰り越して資材購入に充てる予定である。
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