2021 Fiscal Year Research-status Report
発達プログラミングを利用したウシのストレス感受性制御
Project/Area Number |
20K06375
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
須藤 まどか 茨城大学, 農学部, 教授 (40355087)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢用 健一 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 主席研究員 (40343967)
小林 洋介 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 主任研究員 (60455318) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ストレス感受性 / 発達プログラミング / ウシ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、発達プログラミング、すなわち、胎子期から新生子期にかけての環境因子がエピジェネティックな変化を誘導するという現象を利用し、家畜のストレス感受性を制御することが可能か否かを探ることを目的として、新生子期のグルーミング様刺激の有無が子ウシのストレス感受性に及ぼす影響とその作用機序について検討するものである。 (1)令和2年度の実験において、出生直後から疑似グルーミング装置(接触反応型の自動回転ブラシ)が設置されたペンで飼育した雄子ウシは、生後4週齢で非設置ペン飼育個体と比較して血中コルチゾール濃度の基礎値が低くなることが明らかになった。そこで令和3年度は、この効果の持続性を明らかにするため、疑似グルーミング装置使用期間終了から約1ヶ月後に心理的ストレス負荷試験(新奇環境下での社会的隔離)を行って、コルチゾール分泌反応について検討した。その結果、雄では、心理的ストレス負荷に伴う血中コルチゾール濃度変化に哺乳期疑似グルーミング装置使用の影響は認められなかったが、雌では、疑似グルーミング装置を使用した個体の方がストレスによる上昇率が小さくなる傾向が認められた。 (2)令和2年度の実験で観察された、4週齢の雄子ウシにおける疑似グルーミング装置使用によるコルチゾール濃度基礎値の低下について、触覚刺激によるオキシトシン分泌の増加が関与しているか否かを検討した。実験には3週齢の雄子ウシを用い、7日間のオキシトシン反復投与を行った後、4週齢において血中コルチゾール濃度の基礎値およびCRH投与に対するコルチゾール分泌反応の強度を、生理食塩水を反復投与した場合と比較した。その結果、コルチゾール濃度の基礎値およびCRHへの応答性のいずれについてもオキシトシン投与の影響は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年1月に研究分担者の異動があり、この分担者の担当部分(ストレス感受性調節に関与する因子の脳組織中mRNA発現量の測定)について研究継続が困難となった。担当部分についての進捗状況は、予定の60%程度のデータは得られているものの、解析を完了させるまでには至っていない。研究代表者の所属組織構成員の協力を仰ぐことで、研究期間終了翌年度までには完了させることを目指す。その他の部分については、概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
ラットでは、幼若期のグルーミング様刺激によるストレス感受性のエピジェネティックな変化には、セロトニン神経の活性化が関与していることが示唆されている。令和3年度は、触覚刺激と中枢セロトニン神経をつなぐ経路にオキシトシンが関与する可能性について検討したが、それを示唆する結果は得られなかった。そこで令和4年度は、検討対象をラットですでに報告のあるトリヨードサイロニン(T3)に変更し、ウシにおいてもT3を介したストレス感受変化が起こりうるか否かを検討する。具体的には、子ウシに出生後4日目から7日間に渡ってT3または生理食塩水を皮下投与し、4週齢時に新奇物呈示試験とCRH投与試験を行う。また、4週齢時にT3投与の影響が確認できた場合は、離乳後1ヶ月での心理的ストレス負荷試験を実施する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:ホルモン測定用キットの供給ルートが混乱し、納品時期の見込みが立たず購入不能となったため。 使用計画:混乱の原因は製造販売元(海外)の倉庫移転であり、すでに復旧しているため、次年度改めて購入する。使用目的の変更はない。
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