2020 Fiscal Year Research-status Report
Does the intestinal odor sensing regulate the intestinal glucose absorption in chickens?
Project/Area Number |
20K06380
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
高橋 辰行 北里大学, 獣医学部, 助教 (80707852)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ブロイラー / 腸管 / グルコース吸収 / 匂い物質 / 週齢 |
Outline of Annual Research Achievements |
肉養鶏であるブロイラーの腸管グルコース吸収は、孵化後1週齢で最も高く、2週齢以降では著しく低下するが、この低下要因は未だ不明である。ブロイラーの腸管上皮組織において、いくつかの嗅覚受容体の遺伝子発現量が週齢に伴い変化すること、腸内環境は成長に伴い大きく変化することから、腸内匂い物質の量的・質的な変化が腸管グルコース吸収に影響を与える可能性がある。本研究では、成長に伴い変化する腸内匂い物質を同定し、それらが腸管グルコース吸収に与える影響を検討した。実験1: 1週齢、2週齢および5週齢の雄ブロイラーを用いて、これらの空腸内容物を採取した。内容物中の匂い物質をヘッドスペース固層マイクロ抽出法によって捕集し、GC/MS分析によって同定した。実験2:同定した匂い物質(シネオール、ジアセチル、アセトイン、シトロネロールおよび上記4種混合)を用いて、反転腸管法によって1週齢における腸管グルコース吸収に及ぼす影響を検討した。GC/MS分析によって、各週齢においてそれぞれ100種類の匂い物質を同定し、これらの匂い物質のうち週齢間で量的変化が見られたシネオール、ジアセチル、アセトイン、シトロネロールの4つの匂い物質を候補物質として実験に用いた。グルコース吸収試験において、シネオール、ジアセチル、アセトイン、シトロネロールのすべての匂い物質刺激は、コントロールと同様だった。グルコース吸収率においてもコントロールとの差は見られなかったが、ジアセチルおよびシトロネロールでわずかな抑制が確認された。以上のことから、ジアセチルおよびシトロネロールは腸管グルコース吸収の抑制にわずかに関与している可能性が示唆されたが、その効果は小さいことが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本実験によって同定した腸管内容物から匂い物質を、腸管グルコース吸収を調節する可能性が示唆された。しかしながら、本実験で同定した匂い物質の腸管グルコース吸収に対する効果は予想以下であったため、良好な結果は得られておらず、別物質で検討する必要性が生じた。また、ヘッドスペース固層マイクロ抽出法は漂っている匂いを捕集する方法のため、内容物そのものの匂いまで分析できないことと、加えて定量性に欠けるという問題がある。そのため、現在は有機溶媒を用いた溶媒抽出法によって匂い物質を新たに同定している。
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Strategy for Future Research Activity |
実験1)溶媒抽出法による匂い化合物の同定:溶媒抽出法によって、匂い物質を同定する。同定した化合物を用いて、腸管グルコース吸収を再度検討する。 実験2)同定物質の受容体決定:嗅覚受容体はGタンパク質共役受容体(GPCR)であり、活性化するとGPCR特有の細胞内カルシウムあるいはcAMPの上昇または低下が起こる。これを踏まえ、ニワトリの腸管上皮細胞を初代培養し、同定物質で刺激した時の細胞内応答を解析する。
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