2022 Fiscal Year Annual Research Report
抗菌ペプチド「ナイシン」とエタノールを組み合わせた抗菌剤の開発とその作用機構解析
Project/Area Number |
20K06382
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
川井 泰 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (00261496)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 抗菌ペプチド / ナイシン / エタノール / 保存性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナイシンは、チーズ製造用乳酸菌(Lactococcus lactis)により生産される抗菌ペプチド(バクテリオシン)で、日本を含む世界50ヶ国以上で食品添加物として使用されている唯一のバクテリオシンである。当研究室では、中性pH域で溶解性低下によりナイシンの抗菌効果が大幅に低減することを抑制する溶媒としてエタノールに着目し、低~高濃度(5~80%)エタノールとナイシンを組み合わせた高い殺菌効果を有する市販・実用化可能な抗菌スプレーの開発を目指すことを目的とした。 初年度では、30℃および37℃にて、ナイシン添加濃度2.5ppm以上、pH4(乳酸により調整)、および遮光有りでナイシン活性が半年間以上で維持されることを見出し、エタノール・ナイシン溶液の常温保存が可能であることを見出した。 ナイシン生産する各乳酸球菌株は、ナイシン生産と共にナイシンから自身を保護する耐性機構(自己耐性タンパク質・ペプチド)を有している。次年度では、自己耐性機構を担う各因子(NisI、NisF、NisE、およびNisG)単独発現株を構築し、検証を試みた結果、NisI、NisFEG、およびNisKの各単独発現株の取得に成功し、特にNisK発現株がNisIに匹敵するナイシン耐性機構を有することを初めて見出した。 最終年度では、NisKを含む各ナイシン耐性遺伝子導入株に対するエタノール・ナイシン溶液の抗菌効果と菌体付着性を検討した結果、5%エタノール・ナイシン溶液は、ナイシン耐性を有する全ての遺伝子導入株に対して、高い抗菌効果と菌体付着性を示した。低濃度のエタノールは殺菌的に作用しない事から、5%エタノールにより各自己耐性タンパク質の機能が停止すると共に、エタノール存在下でナイシンは強固に菌体に付着することで5%エタノール・ナイシン溶液が抗菌効果を提示したと考えられた。
|