2021 Fiscal Year Research-status Report
神経伝達物質を増殖因子とする乳酸菌の宿主ストレス下における有効性とその挙動解明
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20K06384
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
遠野 雅徳 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 遺伝資源研究センター, 上級研究員 (50547718)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊田 淳 茨城大学, 農学部, 教授 (00292483)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 乳酸菌 / 心理社会的ストレス / 機能性飼料 / 機能性食品 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)ストレス性神経伝達物質により増殖促進する有益な乳酸菌を研究の柱として、第2の脳と呼ばれる腸管神経系とプロバイオティック乳酸菌の関係を追究し、ストレス応答による腸内細菌叢の悪化等を予防・改善する新発想の機能性飼料・食品の創成を目指す研究である。 2)動物体内(神経系や消化管)や植物体内においてホルモンやストレス性神経伝達物質として生理的作用を発揮しているカテコールアミンやその代謝産物であるグアイアコール骨格を有する化合物により増殖促進する乳酸菌を2種選抜した。これらの乳酸菌株を生菌の状態で混合した固形飼料の嗜好性について、科学的・倫理的に妥当な範囲で供試動物の例数を増やして追究した。その結果、嗜好性には悪影響がないことを明らかにした。本知見は、食品や飼料に応用時に非常に有用であると考えられる。飼料1グラムあたりの生菌数の条件検討を実施し、最適な成形混合割合やコストマッチできる生菌数となるよう調整した。 3)心理社会的ストレスモデルマウスに本乳酸菌を含まない対照飼料を給餌させた群では、ストレス負荷期間における総摂取量の低下が認められた。他方、乳酸菌給与群では、対照群と比較して、総摂取量の有意な増加が認められた。また、乳酸菌給与群において対照群よりも最終体重の増加傾向認められた。これらの事実は、ストレス感知時のヒトの摂食障害や、家畜の飼料摂取量低下に伴う生産性の悪化を改善できる可能性を示唆している。 4)さらに、乳酸菌給与下の心理社会的ストレスモデルマウスでは、対照飼料給与時と比較して、精神・行動発達の促進、目標指向行動改善、無気力改善、内発的動機改善、うつ病/ストレス/精神障害等や記憶能力改善効果が認められた。以上の知見は、本研究で見出した乳酸菌がストレス下の生体内において、脳神経系または身体的に関連する状態、障害、または疾患を処置または予防できることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究が解明を目指している科学的問いの1つとして、「カテコールアミンやグアイアコール骨格化合物により増殖促進する乳酸菌が、生体内で有用な働きを示すのか?」がある。本年度の研究により、本問いに対する成果が得られたことから、概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
主に当該乳酸菌の発揮する上記の有用効果について、メカニズム解明に取り組む。具体的には、経口投与後の腸内細菌叢変化等について、次世代シークエンサーを用いた網羅的メタゲノム解析により追究する。また脳や腸管サンプルを用いて、神経伝達物質や各種代謝産物のプロファイルについて、LC/MS/MSやHPLCにより追究する。
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Causes of Carryover |
COVID-19パンデミック拡大により、予定されていた試験の実施が困難な状況であった。また、世界的な半導体・人手不足により、購入・外注予定の資材やデータの入手が停滞し、年度内の納品が困難な状況であった。翌年度にこれらの問題を解消するために、試験計画に大きな変更はせず、新たに予算執行を実施予定である。
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