2020 Fiscal Year Research-status Report
犬の変性性脊髄症を起こす変異SOD1蛋白質の立体構造解析と治療基盤の構築
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20K06410
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
神志那 弘明 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (50506847)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小畠 結 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (00805442)
本田 諒 岐阜大学, 大学院連合創薬医療情報研究科, 助教 (00820143)
原 英彰 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (20381717)
鎌足 雄司 岐阜大学, 高等研究院, 助教 (70342772)
加藤 善一郎 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (90303502)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 神経変性疾患 / ミスフォールド / ALS / 低分子化合物 / 分子シャペロン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のテーマは犬の変性性脊髄症(DM)の病態解明と治療基盤の構築である。DMは人の筋萎縮性側索硬化症(ALS)と類似する致死性の神経変性疾患であり、両疾患ともスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子変異によりアミノ酸置換が生じ、SOD1蛋白質の立体構造変化(ミスフォールド)が起きると考えられている。本研究では、犬のSOD1蛋白質の異常構造(毒性構造)を明らかにし、その毒性構造を基盤として治療薬を開発することが目的である。 昨年度は過去に我々が作製した犬の変異SOD1蛋白質に対する特異的モノクローナル抗体(16G9抗体)(Kobatake Y. et al. J Neurol Sci. 372:369-78,2017)を用い、犬の変異SOD1蛋白の異常構造を解析した。様々な条件下で凝集させた変異SOD1蛋白質を作製し、16G9抗体が特異的に認識する凝集体を選出し、その特性を明らかにした。変異SOD1蛋白は凝集の過程で本来結合している銅と亜鉛が解離し、酵素活性を失うことがわかった。DM発症例の脊髄組織の解析では、変異SOD1蛋白は神経細胞内およびグリア細胞内に蓄積しており、SOD1蛋白の酵素活性は著しく低下していることから、金属解離型SOD1蛋白が凝集体の構成蛋白であると考えられた。 また、犬の予測立体構造を基にin silico計算によりSOD1の構造を安定化する低分子化合物を設計した。同様にミスフォールド蛋白のリフォールディング効果が期待される数種の分子シャペロンも解析した。これら低分子化合物と分子シャペロンを組み換えSOD1蛋白と反応させ、蛋白のミスフォールド阻害効果を解析したところ、いくつかの化合物において効果が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
犬の変異SOD1蛋白質の結晶化とX線回折については、現在も進行中であるが、すでにin silico計算により蛋白のミスフォールド阻害効果のある化合物の選出は完了している。また、変異SOD1蛋白質に対する特異的モノクローナル抗体を用いて、毒性構造の解析も進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
犬の変異SOD1蛋白質の結晶化とX線回折を行う。また変異SOD1蛋白質毒性構造の成長を阻害することによりDMの発症を抑制する特異的抗体を作製する。変異SOD1蛋白質を異なる条件下で凝集させた異常構造を作製し、過去に我々が開発したSOD1蛋白質発現in vitroモデル(Yokota S. et al. Neurosci Lett. 687:216-22. 2018)を用いて細胞毒性作用を確認する。変異SOD1蛋白質の毒性構造を特異的に認識するモノクローナル抗体を選出するため、DM脊髄組織の病変組織(脊髄側索や腹角など毒性構造を持つSOD1蛋白質が蓄積している部位)および非病変神経組織(大脳感覚野や小脳)の免疫組織化学を実施し、抗体を選別する。低分子化合物および毒性構造特異的抗体の治療薬としての有効性をSOD1遺伝子導入細胞を用いた神経細胞毒性の抑制効果により評価する。神経細胞毒性は、我々が既に確立した解析手法、すなわち神経細胞生存率、SOD1蛋白質凝集体形成率(Neuroscience. 303:229-40,2015)、小胞体ストレス(Neurosci Lett. 687:216-22. 2018)、および軸索伸長の解析(In Vitro Cell Dev Biol Anim. 51:1012-22.2015)により評価する。
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Causes of Carryover |
SOD1蛋白質の結晶化とX線回折の一部実験が進行しなかったため支出できなかった。 次年度に本実験を実施する。
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