2020 Fiscal Year Research-status Report
Association of proviral load and the number of infected cell in bovine leukemia virus infection
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20K06413
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
関口 敏 宮崎大学, 農学部, 准教授 (10462780)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 牛伝染性リンパ腫 / デジタルPCR / 絶対定量 / マルチプロウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
牛伝染性リンパ腫ウイルス(BLV)は牛のリンパ球(B細胞)に感染し,宿主のDNA中にプロウイルスとして組み込まれる。そのため血中プロウイルス量は,感染細胞数に比例するといわれ,感染力を評価する指標として知られている。しかし,血中のプロウイルス量だけでは感染力を説明できない個体も少なくない。そこで本研究では,BLVの感染力を説明する「第2の関連因子」を同定することを目的とする。まず,感染力には感染細胞あたりのプロウイルスの挿入個数が影響しているという仮説の下,プロウイルスを高精度に測定する絶対定量法を確立する。次に,臨床検体を用いて血中プロウイルス量とプロウイルスの挿入個数の関係を明らかにする。最後に,プロウイルスの挿入個数が感染力に及ぼす影響をフィールド調査で分析する。本研究によって新たな関連因子が同定されれば,より正確に感染リスクを評価することが可能となる。2020年度は,デジタルPCRを用いたプロウイルスの絶対定量技術を確立した。BLVの温度グラジエント(50~63℃)を用いたアニーリング温度の条件検討では,50℃または51℃が最も良好な結果が得られた。1ウェルでBLVのプロウイルスとハウスキーピング遺伝子(RPP30)の2つの遺伝子を同時測定した結果,BLVおよびRPP30ともにシグナルが強く,ポジティブとネガティブの区別が明確で非常に良好な結果が得られた。さらに,BLVのプロウイルス量(感染細胞の割合)を算出し,リアルタイムPCRとの相関性を分析した結果,両者に有意な相関が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度の達成目標は,デジタルドロップレットPCR(以下「ddPCR」という。)を用いてBLVのプロウイルス量を絶対的に定量する技術を確立することであった。ddPCRは,従来のリアルタイムPCRに比べてはるかに高精度,高感度に定量を行うことができる。リアルタイムPCRと大きく異なる点は,限界希釈(各微小区画にターゲットDNAが1または0となるような希釈)したサンプルDNAを微小区画内に分散させてPCR増幅を行うことである。ターゲット遺伝子を含む微小区画では増幅シグナルがポジティブとなり,ターゲット遺伝子を含まないもしくはサンプルDNA自体を含まない微小区画では増幅シグナルがネガティブとなる。ポジティブの微小区画の数を直接カウントすることでサンプル中のターゲット遺伝子濃度を絶対的に測定する。BLVのプライマーとプローブを設計した後,アニーロング温度などの反応条件を検討した。その結果,50℃または51℃が最も良好な結果が得られた。1ウェルでBLVのプロウイルスとハウスキーピング遺伝子のRPP30の2つの遺伝子を同時測定した結果,BLVおよびRPP30ともにシグナルが強く,ポジティブとネガティブの区別が明確で非常に良好な結果が得られた。さらに,BLVのプロウイルス量(感染細胞の割合)を算出し,リアルタイムPCRとの相関性を分析した結果,両者に有意な相関が確認された。以上の結果から,ddPCRを用いてBLVのプロウイルス量を絶対的に定量できることが確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
ddPCRを用いたBLVのプロウイルス量の絶対定量法が確立できたことから,今後はマルチプロウイルスの解析を行う。BLVはセルフリーでいることはなく,常にB細胞中にプロウイルスとして存在する。しかし,感染個体の中には,プロウイルス量が一細胞あたり理論上2コピー以上となるものも存在する。この予備データから,我々はマルチプロウイルスの仮説を立てた。そこで2021年は,制限酵素処理によってDNAを断片化し,制限酵素処理前と制限酵素処理後のコピー数をデジタルPCRで測定,比較する。期待される結果として,制限酵素処理を行う前は制限酵素処理を行った後と比較して,DNA断片が含まれる微小区画数が少ないため,コピー数の測定結果が少なくなることが予想される。陽性コントロールには反復配列が確認されている複数の遺伝子を用いる。
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Research Products
(4 results)