2021 Fiscal Year Research-status Report
Association of proviral load and the number of infected cell in bovine leukemia virus infection
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20K06413
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
関口 敏 宮崎大学, 農学部, 准教授 (10462780)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 牛伝染性リンパ腫 / プロウイルス / デジタルPCR |
Outline of Annual Research Achievements |
牛伝染性リンパ腫(BLV)は,レトロウイルス科に属する逆転写酵素をもったRNAウイルスである。BLVは主にB細胞に感染し,宿主のDNA中にプロウイルスとして組み込まれ持続感染する。BLV感染牛は病態が進行すると,感染牛の2~3%がB細胞性のリンパ腫(地方病性牛白血病:EBL)を発症する。BLV感染の診断はELISAによる抗体検出の他,Nested PCR法やリアルタイムPCR法によるプロウイルス遺伝子の検出があり,リアルタイムPCR法はプロウイルス量の定量も可能である。BLVに対するワクチンや治療法はなく,感染拡大を防ぐためにはBLV感染牛を摘発・淘汰または隔離飼育するしかない。しかし,米国や日本を含むアジア諸国ではBLVの感染率が非常に高いため,全てのBLV感染牛を淘汰することは難しい。そこでわが国では,BLVの水平感染を防ぐために,高いプロウイルス量のBLV感染牛を優先的に淘汰・更新したり,高いプロウイルス量のBLV感染牛を優先的に隔離飼育したりすることが推奨されている。これらの対策を実施するためには,感染牛のプロウイルス量を定量する必要がある。しかし,検査の需要が年々増加する一方,公的検査機関である家畜保健衛生所では予算と人的資源の不足が大きな課題となっている。民間の検査会社でも受診可能だが,ウイルスの定量検査料金が高額な上,民間会社を利用する生産者は少ない。そこで今年度は,デジタルPCRを用いてBLVのプロウイルス量の絶対定量法を開発し,煩雑な作業とコストを削減することを目的とした。その結果, BLVのプロウイルス量を高精度に定量できる絶対定量法の開発に成功した。本技術はBLV以外の様々な家畜伝染病の検査にも応用可能であることから,畜産業の生産基盤の強化に貢献することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
デジタルPCR法では,ターゲット遺伝子を含む微小区画では増幅シグナルがポジティブとなり,ターゲット遺伝子を含まないもしくはサンプルDNA自体を含まない微小区画では増幅シグナルがネガティブとなる。ポジティブの微小区画の数を直接カウントすることでサンプル中のターゲット遺伝子濃度を絶対的に測定する。そのため,検量線を作成する必要がなく,常に安定した結果が得られる。また,感度が非常に高いため,これまで見逃していた初期感染の感染牛を同定することも可能となる。さらに,本手法はBLV感染症のみならず,あらゆる感染症に応用可能である。試験には宮崎県内の肉用牛繁殖農場から採取した牛の血液(347検体)を実験に供した。デジタルPCR法ではバイオラッド社のQX200 Droplet Digital PCR システムを用いてBLV感染細胞数を測定し、血液細胞全体に占める感染細胞数の割合(CNV2値)を算出した。qPCR法では、BLVのプロウイルス量(PVL値)の測定に、BLV検出用Probe/Primer/Positive controlとCycleave PCR Reaction Mix SPを用いた。得られたCNV2値とPVL値からスピアマンの順位相関係数を算出した。有意水準は5%とした。相関分析では、ddPCR法によるCNV2値とqPCR法によるPVL値の相関係数は0.7以上となり強い相関がみられた。検査法の一致率を示すカッパ係数は0.87と高値であった。感度分析の結果、ddPCRの検出限界は3.9(copies/50ngDNA)、qPCRは7.8(copies/50ngDNA)であった。相関分析と一致率の評価より、ddPCRはBLVの定量法として妥当であることが明らかになった。さらに感度分析の結果より、ddPCRはqPCRよりも高感度であることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
BLVの定量検査にデジタルPCRを利用する利点は,検量線を必要としない、絶対的な定量が可能,ポジティブな微小区画数を直接カウントするため定量精度が高い,PCRが飽和するまでの増幅によって高い感度が得られるなどがあげられる。この他にも,デジタルPCRは限界希釈を行うためサンプル中のPCR阻害要因を軽減できるという性質をもつ。通常,BLVの定量検査には純度の高いDNAが用いられるが,そのためには血中のタンパク質を除去し,白血球のDNAを精製しなければならない。この作業にはコストと時間がかかるため,ハイスループットの解析や他検体を検査する作業には向いていない。そこで今後は,デジタルPCRの夾雑物に対する耐性を利用し,DNAの精製が不要な簡易抽出法を確立する予定である。
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Research Products
(5 results)