2020 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of maturation in Sertoli cell and establishment of evaluation for bovine spermatogenesis
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20K06414
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
北原 豪 宮崎大学, 農学部, 准教授 (90523415)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村瀬 哲磨 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (30303514)
大澤 健司 宮崎大学, 農学部, 教授 (90302059)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ウシ / 精子形成 / セルトリ細胞 / 成熟 |
Outline of Annual Research Achievements |
春機発動前の雄ウシから精液は採取できず、貴重な雄ウシへの侵襲を伴う組織学的検査は困難であるため、十分な精子形成を評価できない。抗ミューラー管ホルモン(AMH)やアンドロジェンなどの性ホルモンは、血液や精細管腔内に分泌され、容易に採取できるが、セルトリ細胞の成熟化や精子形成との関係は分かっていない。雄ウシの精子形成に関する新たな評価法の樹立を目指し、2020年度はセルトリ細胞の成熟メカニズムの解明を目的に試験を行った。 黒毛和種雄子牛17頭を供試し、2カ月齢時から1カ月毎に精巣のニードルバイオプシーを行い、9カ月齢時に両精巣を摘出した。採取した精巣組織を用い、精細管直径、精子形成像、ビメンチンとアンドロジェン受容体(AR)の陽性細胞数(それぞれ全セルトリ細胞数、AR陽性セルトリ細胞数)を観察および計測した。一部の子牛に対し、2カ月齢から1カ月毎に左精巣のニードルバイオプシーも行い、採取した精巣組織におけるアンドロジェン、AMH、LHおよびFSHの受容体遺伝子と、ステロイド産生関連遺伝子であるCYP19A1、SF-1、DAX-1 のmRNAの発現量を測定した。伸長精子細胞が7カ月齢時に観察された群(早期群)と、8~9カ月齢時に観察された群(標準群)、伸長精子細胞が9カ月齢時においても観察されなかった群(遅延群)に分類し、各測定項目を比較した。 全セルトリ細胞数中のAR陽性細胞の割合は、3カ月齢時で早期群が標準群より、8および9カ月齢時で早期群が遅延群より、それぞれ有意に高かった。LH受容体遺伝子の発現量は7カ月齢時で早期群が標準群より有意に高かった。LH受容体遺伝子以外のmRNAの発現量は群間で有意な差はみられなかった。 以上より、セルトリ細胞におけるアンドロジェン受容体の発現は、セルトリ細胞の成熟化を反映し、LH受容体の発現とともに精子形成の進行に関係することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
セルトリ細胞の成熟メカニズムの解明を目的に、試験1として2020年~2022年度の計画で、雄子ウシに対し、出生時から9カ月齢まで、4週毎のニードルバイオプシー、9カ月齢時に両側精巣を摘出することで、精巣組織の経時的な採取を順調に進める事ができた。さらに採取した精巣組織を用い、免疫組織化学染色よるビメンチンおよびアンドロジェン受容体発現を基にしたセルトリ細胞を未熟型と成熟型に分類や両細胞の割合、さらに組織中の遺伝子群(SF-1、DAX-1など)の発現についても、それぞれ経時的な変化を明らかにすることができ、当初計画していた内容を実行し、2021年度へと繋げる準備ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
雄ウシの精子形成に関する新たな評価法の樹立を目指し、2020年度はセルトリ細胞の成熟メカニズムの解明を目的に試験1として調査を開始し、2021年度も引き続き同試験を継続するとともに、試験2としてさらに性ホルモンによる精子形成への関与として血漿中の抗ミューラー管ホルモン(AMH)およびテストステロン(T)を定量し、血中AMH、T濃度、AMH/T比、試験1で明らかとなった遺伝子群の発現と組織学的評価との関係を明らかにする。 さらに春機発動後の精子形成の指標としての有用性を確認するため、種雄牛センターで繋養されている14カ月齢以降の雄ウシから採血し、血中および精漿中AMH、T濃度を測定し、採精した精液をComputer Assisted Sperm Analysis(CASA)することで、精子運動性と精子の正常性(生存、先体の性状)を数値化し、これら性ホルモン濃度、AMH/T比との関係を明らかにすることで、精子形成の指標の可能性を実証し、従来の雄ウシの繁殖性評価にない精子形成に関する新たな評価を樹立させる。
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Causes of Carryover |
現在の残額では、本年度中に希望していた消耗品(ニードルバイオプシー)を購入するには足りないため、次年度の請求する助成金と合わせて購入の予算に充てる。
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