2020 Fiscal Year Research-status Report
次世代シークエンシングを用いた犬種特異的な炎症性腸疾患の原因遺伝子の探索
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20K06423
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
大田 寛 酪農学園大学, 獣医学群, 准教授 (50431333)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 炎症性結直腸ポリープ / ミニチュア・ダックスフンド / 次世代シークエンシング / 全エクソームシークエンス / RNA-Seq |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、ミニチュア・ダックスフンド(MD)の炎症性結直腸ポリープ(ICRP)の病変部および正常な結直腸粘膜を用いたトランスクリプトーム解析と、ICRPに罹患したMDおよび健康なビーグル犬のゲノムDNAを用いた全ゲノムシーケンス解析を実施した。 トランスクリプトーム解析においては、ICRP病変部と正常粘膜では異なる発現パターンが確認された。パスウェイ解析の結果、炎症関連遺伝子だけでなく、酸化的リン酸化や線維化に関わる遺伝子発現の変化も確認され、これらのパスウェイが本疾患の病態に関連している可能性が示唆された。 全ゲノムシーケンス解析においては、MDに特異的と考えられる9000以上の遺伝子バリアントが見つかった。その中で、アミノ酸置換あるいはフレームシフトを起こすものを抽出すると、73バリアントに絞ることができた。現在、これらのバリアントについてサンガーシーケンスを用いて検証中である。 一方で、ICRPの病態解析や診断補助となる分子の探索も行い、急性相蛋白質であるロイシンリッチα2糖蛋白質(LRG)を見出した。ICRPのポリープ病変部では、LRGの遺伝子発現が正常結腸粘膜と比較して有意に増加しており、IL-1β、IL-6などの炎症性サイトカインの遺伝子発現量との有意な相関が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度には、本研究の基盤となる次世代シークエンシングを用いた解析により、ICRPの病態に関わる遺伝子の発現およびバリアントを網羅的に解析し、本疾患における遺伝子発現パターンの全体像を把握することができた。一方、本疾患の発症と関連する特定の遺伝子の発現やバリアントの特定には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
現段階では全ゲノムシークエンシングのデータから疾患に関わるバリアントを同定できていないため、次年度は引き続きバリアント探索を行うとともに、これまでに絞り込んだバリアントのサンガーシーケンスによる検証を継続する予定である。上記の解析で絞り込んだ遺伝子について、その発現についてリアルタイムPCRを用いて検証を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
Covid-19の世界的な流行の影響で国内・国外を問わず学術集会が中止またはOn-line開催となったため旅費での支出が生じなかったため次年度使用額が生じた。 令和3年度は、covid-19の流行状況を見定めながら、参加可能な国内外の学術集会に参加する予定である。
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Research Products
(1 results)