2020 Fiscal Year Research-status Report
鶏大腸菌症の起因菌の特定によるブロイラー生産の改善
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20K06432
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
村瀬 敏之 鳥取大学, 農学部, 教授 (20229983)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 鶏大腸菌症 / ブロイラー / 病原性 / 系統解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
系統解析に基づく型別法における特定のphylogenetic groupが、鶏大腸菌症の原因となる大腸菌(Avian Pathogenic Escherichia coli, APEC)に見いだされるかを明らかにするため、 大腸菌症及び健康鶏由来株を比較した。肉用鶏農場(6農場)及び採卵鶏農場(1農場)の鶏における大腸菌症を疑う病変部から分離した104株(大腸菌症由来株)並びに上記とは異なる肉用鶏農場(4農場)の健康鶏の糞便及び上述の採卵鶏農場において飼養されていた鶏が臨床的に健康な状態であった期間の鶏舎環境材料から分離した119株(健康鶏関連株)を供試した。パルスフィールド電気泳動パターンの分子系統樹作成ソフトによる解析の結果で遺伝的近縁度が90%以上を同一パルスタイプとし、各タイプの代表株のphylogenetic group(A、B1、B2、C、D、E及び F)を決定した。病原性関連遺伝子の保有状況よりAPECの判定を行った。 その結果、供試223株は137のパルスタイプに型別された。phylogenetic group Fに属するパルスタイプの割合は、健康鶏関連株の3.1%に対し大腸菌症由来株で48.6%であった。A及びB1に属するパルスタイプの割合は大腸菌症由来株(8.1%及び18.9%)に対し健康鶏関連株(36.7%及び49.0%)で高く、いずれもAPECと判定されなかった。一方、APECと判定された菌株のパルスタイプは15タイプで、そのうち12タイプがphylogenetic group Fに属し、いずれも大腸菌症由来株であった。健康鶏関連株はいずれもAPECと判定されなかった。以上より、APECと健康鶏関連株が異なるphylogenetic groupに属することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度の計画では、大腸菌症由来株には集団発生事例から分離された株が含まれるので、遺伝学的に近縁な菌株の重複を避けるため、パルス・フィールドゲル電気泳動法(PFGE)により、互いに異なるPFGEパターンを示す菌株を選択し、供試することとした。加えて、大腸菌症以外の分離株についても同様にPFGEパターンが互いに異なる菌株を選択した。それらの菌株を対象に、APECにおいて病原性に関与すると考えられている因子を含め、PCR法による検出を行い、さらに、系統遺伝学的なグループの特定のため近年改良された方法によりグループ分け(遺伝型別)を実施する計画であった。 以上の計画に基づき、全ての実験を実施することができ、APECと健康鶏関連株が異なるphylogenetic groupに属することを示唆する結果が得られたため、2021年度に実施予定の発育鶏卵を用いた、病原性を評価する実験を実施することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、発育鶏卵における大腸菌の病原性を接種後の死亡率に基づく病原性評価により実施する。発育鶏卵接種法は、鶏個体を用いずに病原性を検討する方法として国外において報告され、応募者及び研究協力者が検証し、その有効性を確認している。本法により、大腸菌症由来株並びに健康鶏及び鶏舎環境由来株の病原性と前年度に実施した遺伝型別との関連を検証する。発育鶏卵において病原性を示すとともにその大多数に共通する性状を把握する。 2022年度は、鶏個体を用いた大腸菌の病原性を実施する計画である。2021年度に見出すと仮定している、発育鶏卵において病原性を示すとともにその大多数に共通する性状を有する菌株を鶏個体に接種し、大腸菌症を再現することを確認する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の発生に関連し、消耗品の納品に時間を要したことから納入価格の確定が遅れ、助成金の使用計画の調整に支障をきたしたため、次年度使用額が発生した。ただし、次年度使用額は次年度交付予定額の5%以内であることから、当初の使用計画を大きく変更することなく、合わせて使用することが可能である。2020年度は概ね順調に研究を実施しているので、次年度の研究も当初の予定通り実施することが可能である。
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Research Products
(1 results)