2021 Fiscal Year Research-status Report
鶏大腸菌症の起因菌の特定によるブロイラー生産の改善
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20K06432
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
村瀬 敏之 鳥取大学, 農学部, 教授 (20229983)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 鶏大腸菌症 / ブロイラー / 病原性 / 系統解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度において、肉用鶏農場(6農場)及び採卵鶏農場(1農場)の大腸菌症を疑う鶏の病変から分離した104株(大腸菌症由来株)のうちphylogenetic group Fに属する大腸菌は65株で、このうち病原性関連遺伝子の保有状況よりAvian Pathogenic Escherichia coli (APEC)と判定されたのは57株であった。一方、上記肉用鶏農場とは異なる4農場の健康鶏の糞便及び上述の採卵鶏農場において飼養されていた鶏が臨床的に健康な状態であった期間の鶏舎環境材料から分離した119株(健康鶏関連株)のうちgroup Fは4株にすぎず、いずれもnon-APECと判定された。2021年度においてはこれら菌株の発育鶏卵における病原性を調べるため、1株あたり12個の発育鶏卵に接種して鶏胚4個以上を死滅させた場合を病原性、3個以下の場合を非病原性と判定した。group Fの大腸菌症由来APEC株のうち39株は、鶏胚に病原性を示したものの、残る18株は非病原性と判定された。group Fの健康鶏関連株(non-APEC)のうち3株を供試したところ、2株が非病原性、1株が病原性と判定された。F以外のgroupの株も含め大腸菌症由来のAPEC株61株のうち42株が、また、non-APECの43株のうち17株が鶏胚に病原性を示した。健康鶏関連株92株(いずれもnon-APEC)のうち5株のみが鶏胚に病原性を示した。接種した発育鶏卵12個のうち死滅したのが3個以下であった菌株(非病原性)について、大腸菌症由来株の鶏胚致死率は平均16%であったのに対し、健康鶏関連株では4.5%であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度に供試した大腸菌症由来株と健康鶏関連株を用いて、発育鶏卵接種試験におけるこれら菌株の病原性を評価することが2021年度の計画であった。大腸菌症由来株は全ての菌株を、健康鶏関連株についてはパルスフィールドゲル電気泳動パターンが異なる菌株を選択して実施したため、当初の計画通り成績を得ることができた。大腸菌症由来株の約60%はphylogenetic group Fに属し、その大多数が病原性関連遺伝子の保有状況からAPECと判定された。しかし発育鶏卵接種試験において鶏胚に病原性があると判定されたのは、このうち約60%の菌株であった。一方、健康鶏関連株の90%以上がphylogenetic group Fに属し、すべてがnon-APECで、大多数が鶏胚に対し非病原性と判定された。したがって、非病原性の大腸菌株の大多数に共通する性状は把握できたものの、病原性株の大多数に共通する株を把握したと明言することは困難である。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、発育鶏卵において病原性を示すとともにその大多数に共通する性状を有する菌株を鶏個体に接種した場合、大腸菌症を再現することを確認することが当初の目的であったが、2021年度の成績を踏まえ一部を変更して実施する。すなわち、phylogenetic group FのAPECで鶏胚に病原性を示す株とgroup F以外のnon-APECで鶏胚に病原性を示さない株について鶏個体における病原性を確認する。一方、健康鶏関連株のうち採卵鶏関連株は鶏舎環境由来株のみでの糞便由来株が含まれていない。そこで、採卵鶏の糞便材料から大腸菌を分離し、phylogenetic group、病原性関連遺伝子、発育鶏卵接種試験を行い、成績を追加する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、当初予定していた学会発表のための出張が不可能となったため相当する予算の執行ができなかった。そのため、急ぎ投稿論文を作成し、英文校閲を外注したが、次年度使用額が発生した。ただし、次年度使用額は次年度交付予定額の5%以内であることから、合わせて使用することが可能である。2021年度の成績を踏まえ、次年度の研究計画を一部変更するものの、本研究課題を実施することが可能である。
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Research Products
(1 results)