2020 Fiscal Year Research-status Report
マウス着床前胚時の細胞内撹乱が長期に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
20K06443
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
岸上 哲士 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10291064)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 発生工学 / 胚の体外培養 / 着床前発生 / 着床前胚の環境 / 長期影響 |
Outline of Annual Research Achievements |
体外および体内における胚の環境が発生率や産仔率に影響するだけでなく生活習慣病などの将来の疾患リスクに結びつくことが明らかになりつつあるが、その全体像や詳細な機構は不明なままである。本研究課題の目的は、着床前胚の代謝、エピジェネティクスおよび細胞内シグナルと生活習慣病との関連に着目し、着床前胚の細胞生理学的撹乱が胚の発生および将来個体の健康に及ぼす影響を明らかにすることである。1年目である令和2年度は、翻訳後修飾の一つであるN-アセチルグルコサミン(N-acetylglucosamine、GlcNAc)に着目し、これを触媒するO-GlcNAc転移酵素の阻害剤OSMI-1による胚への影響を検討した。胚の高濃度OSMI-1処理は、顕著に胚盤胞への発生率を低下させる一方、低濃度OSMI-1処理は逆に発生を改善する傾向が見られ、グルコース代謝の一つであるグルコサミン経路に関連する本修飾が発生能の制御に関わっていることが示唆された。この低濃度処理した胚からすでに産子が得られており、着床後の発生に大きな影響を及ぼさないことが明らかとなっている。今後はこのような適度な阻害が産子率におよぼす影響や長期にわたって個体の健康にどのような影響を及ぼすか明らかにする必要がある。一方、胚におけるオートファジー活性制御の研究からは、オートファジーの阻害剤として知られるクロロキンが卵子活性化に影響を及ぼすことを見出した。現時点では詳細な機構は不明であるが、今後の研究から卵子活性化機構の新しい知見が得られることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
胚の細胞生理学的攪乱の実験は順調に進められている。また胚移植による産子も得られてその長期影響について研究を開始できている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の令和3年度においては、引き続き着床前胚の細胞生理学的攪乱による胚への影響を明らかにするとともに、産子の成長、特に成体における糖代謝の異常の有無等に着目して長期影響を明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が無いため、記入しない。
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