2020 Fiscal Year Research-status Report
自然免疫異常が惹起する過剰炎症反応と獲得免疫異常の解析
Project/Area Number |
20K06446
|
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
荒谷 康昭 横浜市立大学, 理学部, 教授 (30192470)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 免疫 / 好中球 / 活性酸素 / ミエロペルオキシダーゼ / NADPHオキシダーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
好中球やマクロファージなどの食細胞は自然免疫系を担う白血球であり、病原菌を貪食して活性酸素を放出することによって生体内に侵入した病原菌の速やかな殺菌を営んでいる。これらの白血球は、食細胞NADPHオキシダーゼの触媒によって、まず酸素からスーパーオキシド(O2-)という活性酸素を産生し、O2-は自発的に過酸化水素(H2O2)へと代謝される。さらに、好中球は好中球だけが持っているミエロペルオキシダーゼ(MPO)によって、H2O2から次亜塩素酸という活性酸素も産生する。本研究は、活性酸素産生異常という自然免疫系の異常によって感染非依存的な炎症性疾患も助長されてしまう可能性と、自然免疫の異常が獲得免疫の異常をも誘発してしまう可能性についての真否を探ることを目的としている。食細胞NADPHオキシダーゼのノックアウトマウス(CGDマウス)は、酵母の菌体成分やカンジダの死菌に曝されるだけで、非感染的な肺炎が野生型マウスよりも重篤化するという興味深い現象をすでに発見し報告した。令和2年度はさらに、酵母菌体成分に曝されたCGDマウスは肺炎が重篤化するだけでなく、野生型マウスよりも胸腺が極度に萎縮し、胸腺リンパ球がほぼ枯渇し、さらに骨髄中の好中球数とリンパ球数の比率が好中球側に大きく傾くという非常に興味深い病態を発症することを発見した。すなわち、自然免疫の異常が獲得免疫の異常を誘発している可能性を示唆する結果を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記した成果は令和2年度の日本分子生物学会において発表するとともに、英文学術論文として公表した。自然免疫の異常が獲得免疫の異常を誘発している可能性を示唆する結果を得ることができ、概ね順調な進捗を得た。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和2年度に得られた研究成果を引き続き発展させて、自然免疫の異常が獲得免疫の異常を誘発している可能性を探る。一方、活性酸素産生異常という自然免疫の異常が感染非依存的な炎症性疾患を助長している可能性についても引き続き探るため、酵母菌体成分やカンジダ死菌に曝されたMPOノックアウト(MPO-KO)マウスやCGDマウスが重篤な肺炎を発症するメカニズムを明らかにすることに勢力を注ぐ。すでに、MPO-KO好中球やCGDマクロファージからある種のケモカインが過剰産生することが肺炎重篤化の一因であることを突き止め報告しているので、そのケモカインがMPOや食細胞NADPHオキシダーゼの欠損によって過剰産生するシグナル伝達機構を解析する。
|
Causes of Carryover |
令和2年度に学術論文に発表した驚くべき病態の発症メカニズムを暴くために、当初の計画では令和3年度に実施予定であった造血幹細胞分化の解析の開始を本年度に繰り上げ、そのために前倒し請求を行った。しかし、年度末の深刻なコロナ禍の影響により実験に少々の滞りが生じ、フローサイトメトリー関連の試薬の購入を令和3年度に延期したため次年度使用額が生じた。これは令和3年度のフローサイトメトリー関連の試薬購入費として速やかに使用する。
|