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2020 Fiscal Year Research-status Report

哺乳動物の冬眠に特異的な遺伝子発現制御による末梢組織の低温耐性メカニズムの解明

Research Project

Project/Area Number 20K06447
Research InstitutionKitasato University

Principal Investigator

塚本 大輔  北里大学, 理学部, 助教 (50598836)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2023-03-31
Keywords冬眠 / 遺伝子発現制御 / 体温変動 / 肝臓 / シマリス
Outline of Annual Research Achievements

小型冬眠哺乳動物シマリスの体温は、非冬眠期(約4月~9月)には外気温に関わらず、活動時は約38℃、休息時は約36℃の狭い範囲で変動している。一方、冬眠期(約10月~翌3月)には、外気温約4℃の場合、体温が約6℃にまで低下する約6日間の深冬眠と、約37℃まで体温が急激に上昇し覚醒する約1日の中途覚醒を繰り返しているが、全ての組織は健全である。冬眠は、恒温動物に共通の遺伝子の発現や機能などを冬眠用に再調整することにより制御されていると考えられている。申請者はこれまで、シマリスの肝臓における遺伝子の発現制御機構に着目し、冬眠期の転写調節にも、非冬眠期と同様、ヒストン修飾の制御や概日性の転写因子 HSF1 が冬眠-中途覚醒サイクルに伴って活性が制御されていることを明らかにしてきた。本研究では、冬眠期の遺伝子発現は、冬眠-中途覚醒の体温変動を利用して非冬眠期の概日性の遺伝子発現制御機構を再調整することで制御されているというモデルを検証している。当該年度では、①低温ショック RNA 結合タンパク質 Rbm3 の遺伝子のプロモーター領域のヒストン修飾が深冬眠時に変化していることを明らかにしていたが、その修飾を制御するヒストン修飾酵素およびそのヒストン修飾酵素のリクルートに関わる可能性のある転写因子を同定した。さらに、②非冬眠期の活動時と休息時、冬眠期の深冬眠時と中途覚醒時のそれぞれ各3個体ずつの肝臓から調製した total RNA を用いて RNA-seq 解析を行い、一部の得られた結果からデータ解析を行い、発現量に差のある遺伝子を同定した。同時にシマリスはリファレンスデータが無いため、de novo アセンブリを行い、シマリス独自のトランスクリプトームデータベースを作成し、Rbm3 および HSF1 の結合配列を含む遺伝子を探索できる環境を整えることができた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

実験動物であるシマリスが新型コロナの影響により入手不可能になったため、シマリス生体を用いて出来る研究に制限が生じた。特にテレメトリーシステムを用いてシマリスの体温変動をリアルタイムで測定し、冬眠期の適切な体温変動時にサンプリングを行うことが困難になりつつある。そのため限られたサンプルで遂行可能な実験計画の立て直しに多少時間を要したが、凍結サンプルを用いることでも品質の良い total RNA を精製することが可能であることや、ChIP-qPCR を行うことはできることを確認できた。一方、RNA-seq データを解析する時間を多く得られたため、バイオインフォマティクス解析を行える環境を整えることができ、一部の研究計画は順調に進展していると考えている。

Strategy for Future Research Activity

新型コロナウイルスの感染状況が改善し、シマリスが入手可能な状況になれば、①テレメトリーで冬眠期の体温変動を正確にモニタリングし、深冬眠移行時と中途覚醒移行時の肝臓 total RNA-seq 解析を行う。同時に、冬眠期の体温変動に伴った肝臓での時計遺伝子の発現変動を解析する。
一方、状況が改善せず、今後もシマリスの入手が不可能な場合は、新しい動物実験を必要とする研究は困難になるため、以下の計画を中心に進める。②冬眠期の深冬眠-中途覚醒サイクルにおける Rbm3 遺伝子の発現制御機構を明らかにする。③現在解析中のシマリストランスクリプトーム解析データを含めた全てのデータを用いて、シマリスデータベースを構築し、RNA-seq 解析結果を精査する。そして、休息時と深冬眠時の体温低下に共通して発現上昇する遺伝子群や深冬眠時に発現上昇する遺伝子群などを明らかにする。④冬眠期の体温変動によって活性が制御される HSF1 や Rbm3 が、末梢(肝臓)時計遺伝子の発現制御に関与しているのかどうかを明らかにしていくため、③で発現量が変動している時計遺伝子の中から HSF1、Rbm3 結合配列を含む遺伝子を探索し同定する。これらの研究から、シマリスの肝臓における冬眠期に特異的な遺伝子発現制御機構と低温耐性メカニズムの解明を目指す。

Causes of Carryover

新型コロナの影響により実験動物シマリスを購入できなくなったため、当該年度で計画していた実験動物予算を次年度分として再計画している。また、同じく新型コロナの影響により、オランダへの国際学会参加発表や神戸での国内学会参加発表が延期やオンライン開催となったため、旅費の予算についても当初の計画と変更が生じた。一方、委託中のトランスクリプトーム解析の費用が当該年度の残予算だけでは不足していたため、その費用を翌年度分予算と合算して使用する計画である。その他の予算使用計画に大きな変更はない。

  • Research Products

    (2 results)

All 2020

All Presentation (2 results)

  • [Presentation] Impact of body temperature rhythm on gene expression during hibernation in the liver of chipmunk2020

    • Author(s)
      塚本大輔、伊藤道彦、高松信彦
    • Organizer
      第43回日本分子生物学会年会
  • [Presentation] 収斂重複型性決定遺伝子 ツメガエル dm-W とメダカ dmy の分子進化:下剋上進化仮説の検証に向けて2020

    • Author(s)
      藤村楓雅、荻田悠作、林舜、塚本大輔、田村啓、高松信彦、伊藤道彦
    • Organizer
      第22回日本進化学会

URL: 

Published: 2021-12-27  

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