2022 Fiscal Year Research-status Report
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20K06454
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
回渕 修治 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (70554921)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 多能性幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
再生医療では迅速かつ安全な治療のため、品質の高い様々な種類の多能性幹細胞(iPS/ES細胞)をバンク化し、他家移植することが進められている。その際、治療目的に沿う細胞の性質(分化効率の良さなど)を持つ細胞の選定が必要であり、申請者は多能性幹細胞の性質(品質)に影響を与える要素として男女差に注目している。 女性のX染色体では、Xist RNAによりX染色体の不活性化が起きているが、その不活性化が不完全になることで多能性幹細胞は分化抵抗性になることが知られている。女性由来の多能性幹細胞は長期継代によりX染色体の不活性化が不完全なり一部の遺伝子が発現するようになるが不明な点も多いため、iPS細胞の長期継代を行なった。 その結果、長期継代したiPS細胞は見た目などは大きく変化しておらず正常に継代できたと考えられた一方で、分裂速度が若干亢進していた。その長期継代を行ったiPS細胞でRNAseq解析を行なったところ、継代とともに、X染色体上の遺伝子で細胞分裂に関与すると知られている遺伝子が発現上昇していることが判明した。また、公開されている多能性幹細胞のRNAseqのデータを用いた解析より、X染色体の不活性化が不完全な細胞で上記の細胞分裂に関する遺伝子が発現上昇していた。以上のことから、X染色体の不活性化が不完全で分化抵抗性を示す多能性幹細胞は分裂速度が亢進しているため、より品質の悪い細胞が広がることが推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長期継代したiPS細胞を得ることができ、そのRNAseq解析を行った。継代とともにX染色体上の遺伝子で細胞分裂に関与すると知られている遺伝子が発現上昇していた。また長期継代した細胞は分裂速度が若干亢進することから前述の遺伝子の関与が推測された。全体としてはコロナ禍の影響で遅れているが本年度はおおむね順調に進展したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
iPS細胞の継代とともにX染色体上の遺伝子で細胞分裂に関与すると知られている遺伝子が発現上昇していることが推測された。そこでその遺伝子の機能性解析をknock downなどすることで行う予定である。また、細胞は継代と共にそのゲノム・遺伝子に突然変異が生じることが多能性幹細胞を再生医療で使用する際の品質に影響することが考えられる。そこで長期継代したiPS細胞の変異解析をする予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため全体的な研究実施計画が遅れているため、計画の延長を行い次年度使用額が生じた。
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Research Products
(6 results)