2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K06457
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
日下部 博一 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (60344579)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マウス / フリーズドライミニ卵 / 染色体 / スピンドル / ミニ卵 / 再構築卵 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスの未受精卵から染色体(スピンドル)を含む直径0.01~0.02ミリメートルほどの「ミニ卵」を作製し、二糖類であるトレハロースを含む溶液をベースとしてフリーズドライ(凍結乾燥)を試みた。通常の顕微操作における除核操作でミニ卵を作製すると、出来上がったミニ卵はサイズが小さすぎるために操作がしにくく、ミニ卵をロスしやすくなった。そこで今回、顕微授精のICSI(卵細胞質内精子注入法)で使用されるホールディングピペットに、透明帯を除去した未受精卵の染色体(スピンドル)のある領域を吸引させて保持し、もう片方の極太インジェクションピペット(直径0.03~0.05ミリメートル)を用いて吸引されていない側の細胞質の大部分を振り子のようにカットすることによって、通常の除核操作よりも簡単にスピーディーに大きめのミニ卵を作製した。 フリーズドライ用溶液に関して、作製したミニ卵を200~400 mMのトレハロース水に加えてフリーズドライすると、再加水した後のミニ卵の回収率が、用意したミニ卵の数の50%もしくはそれ以上となり、これまで試したどの候補溶液よりも高くなった。再加水時にミニ卵は円形で薄茶色に呈色しているため、見つけやすい点もこの溶液を使用する利点である。一方、この「フリーズドライミニ卵」の問題点は、そのままでは使用できないほどに固く、レシピエント卵(除核卵)に注入するためにインジェクションピペット内に吸引することが困難なことである。 トレハロース水を用いること以外の方法ではフリーズドライミニ卵の再加水後の回収はほとんどできなかった。わずかながら回収できたミニ卵を除核卵に注入し、ミニ卵由来の再構築卵を賦活化させて第一卵割中期まで発生することがあったが、結果は安定せず、染色体ダメージもみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究初年度(令和2年度)から引き続いて新型コロナウイルス感染拡大による研究機会の制限等の影響が大きく、令和2年度じゅうに完了すべき内容(ミニ卵のフリーズドライ用溶液の選定)を令和3年度も引き続き継続しなければならず、時間を要したことによる。そのことに加え実験面において、フリーズドライされたミニ卵を再加水後に回収することが予想以上に困難を極めたことも影響している。フリーズドライ用溶液中のトレハロース濃度を200 mMまたは400 mMに高くすると、加水後のミニ卵の回収率は高くなるが、ミニ卵が固すぎて顕微操作できず、除核卵に注入できなかった。一方、フリーズドライ用溶液中のトレハロース濃度を0~20mM付近に低くすると、再加水後のミニ卵は顕微操作によってようやく除核卵に注入できるくらいの柔らかさになるが、逆にミニ卵の回収が極めて困難になる(ほとんど回収できない)ことがわかった。つまり、フリーズドライ用溶液中の最適なトレハロース濃度を決定する実験に時間を要したことも研究遅延の一因である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終的な到達目標は、作製したフリーズドライミニ卵を、レシピエントである別の除核卵に注入して再構築卵を作製し、受精させて染色体観察・発生の観察(胎仔または産仔を得ること)までを行うことである。現在の進行状況から令和4年度中にそこまでの成果を得ることは困難と言わざるを得ない。しかし、高濃度のトレハロース溶液を用いてミニ卵をフリーズドライし、再加水後に高頻度に回収されたミニ卵をいかに柔らかくするか、その方法を早急に確立することさえできれば、今後の研究の進行速度が急加速するものと思われる。 フリーズドライミニ卵由来の再構築卵の染色体が構造的にも数的にも正常であることが、雌性配偶子保存のうえで大事なことであるから、通常の染色体解析または分子細胞遺伝学的手法を用いた染色体解析を重点的にかつ慎重に行う予定である。
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Causes of Carryover |
前年度(令和2年度)に引き続き、新型コロナウイルス感染症(COVID19)の感染拡大の影響が令和3年度も続いたため、研究機会の削減や研究の進行遅延によって「旅費」が発生せず、論文発表もないため「その他」の支出がほとんどなかったことによる。令和4年度の研究の進行状況と新型コロナ感染拡大の終焉状況にもよるが、学会発表のための旅費と論文の投稿料として使用することはもちろんのこと、実験試薬、特に染色体解析のための高価な分子生物学的試薬の購入費用に充てることも予定している。
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