2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K06466
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
松岡 邦枝 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基礎医科学研究分野, 主席研究員 (40291158)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 健太 東京農業大学, 生物産業学部, 教授 (20508113)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 内耳外有毛細胞 / 再生 / 難聴 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はジフテリア毒素(DT)を投与することにより任意の時期に内耳外有毛細胞(OHC)を破壊可能なPrestin-hDTRマウスを開発した。OHC破壊前、破壊7日後および35日後の内耳蝸牛における遺伝子発現変動をマイクロアレイ解析により網羅的に比較した結果、破壊35日後にOHCに特徴的な遺伝子群が発現上昇していることから、これまで自発的に再生することはないとされていたOHCが自発的に再生している可能性のあることが示唆された。本研究では、OHCの再生の可能性を探り、そのメカニズムを解明することを目的とする。 細胞の再生過程は、その細胞の分化・成熟過程を辿ると考えられることから、コルチ器の形成期にOHCを破壊した場合の遺伝子発現変動をRNA-seq解析で詳細に調査し、OHCの形成に重要な役割を担う遺伝子の同定を試みた。その結果、OHCの成熟に関与すると考えられる破壊後に発現が顕著に減少する遺伝子を同定した。特異抗体を用いた免疫組織学解析によりOHCの支持細胞であるダイテルス細胞に発現することが明らかとなった。この結果は、OHCの形成にダイテルス細胞が密接に関わっていることを裏付けるものであった。 一方、OHCの分化には、Notch情報伝達系およびWnt情報伝達系が重要とされていることから、OHC再生に対するWntシグナル阻害剤であるRPI-724の効果をin vivoで検証した。Prestin-hDTRマウスにDTを投与してOHCを破壊したマウスにRPI-724を週3回12週間腹腔投与を行った結果、聴力の改善傾向が認められ、RPI-724の難聴治療のための有効性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、新型コロナウイルス感染症の影響で、輸入試薬納入の遅延、研究分担者の移動制限等当初予期していなかった事象が発生したが、可能な研究を前倒しして行うなど研究を推進するべく努力し、新しい知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
OHCの形成期に重要であると推定された遺伝子について、その発現様式を詳細に観察する。また、その機能を明らかにするためにCRISPR/Cas9システムによるゲノム編集によるノックアウトマウスを樹立する。 Wntシグナル阻害剤RPI-724の治療効果が示唆されたことから、RPI-724の投与条件をさらに検討し、聴力変化、OHCを特徴付ける遺伝子の発現変動、およびコルチ器の形態への影響を解析する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で、各種学会がオンライン開催となり旅費が不要であった、また、輸入試薬の納品が遅れたことなどから、次年度使用額が生じた。 2021年度には、免疫組織化学解析のための特異抗体や遺伝子発現解析のための試薬の購入に使用する。
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