2022 Fiscal Year Annual Research Report
改良型バルク法による新規本態性振戦モデルラットの原因遺伝子の同定
Project/Area Number |
20K06479
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Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
岡村 匡史 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 実験動物管理室長 (00333790)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 本態性振戦 / 次世代シークエンサー / バルク法 / ラット |
Outline of Annual Research Achievements |
振戦は不随意な律動的な体の動きであり、その原因の中で最も頻度が高いのが本態性振戦である。本態性振戦は発症機序や原因遺伝子など未解明な点が多く、有効な根治療法が存在しないため、その治療は対症療法が中心である。申請者らは自家繁殖していたF344ラットにおいて全身性に動的振戦を呈する個体を発見した。本研究は、次世代シークエンサーを用いた改良型バルク法により、短期間で効率的に原因遺伝子を同定することを目的とする。 後代検定により、遺伝型をホモ接合型および野生型と確定できた個体4匹からDNAを抽出し、それぞれの遺伝型4匹分をバルク化して、次世代シークエンサーにより塩基配列を解読し比較解析を行った。登録されているラットのゲノム配列は、BNラットの配列をベースにしているため、F344系統との系統差により、100万個以上のSNPおよびIndelが検出された。そこで、F344系統も有しているSNPを排除し、解読された配列の品質を示すQUAL値300以上とし、最後にin silocoで予想されるタンパク質の機能に与える影響が”HIGH”であるSNPおよびIndelを抽出した結果、糖を細胞内に輸送するトランスポーター遺伝子にSNP(C > T)を同定した。また、病態解析については、脛骨および腓骨の湾曲が観察されたためくる病を疑ったが、血中アルカリホスファターゼの顕著な増加は見られなかった。 本研究で同定したトランスポーター遺伝子変異と明確な関連が示されている疾患は報告されておらず、さらにノックアウトマウスは、呼吸不全で出生後致死になることから、ヒトにおいては新規疾患の原因遺伝子であることが推察される。本研究で用いた変異ラットは、ヒトの未診断疾患のモデル動物となる可能性が示されたため、ゲノム編集技術を用いて同じ変異を導入したマウスを作製し、さらに詳細な機能解析を行う予定である。
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