2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K06487
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
酒井 恒 神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 助教 (70526251)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ファンコニ貧血 / 脂質代謝 / DNA損傷応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はファンコニ貧血の責任遺伝子産物(FAタンパク質)の1つであるFANCD2タンパク質と脂質代謝に関与する酵素の1つが相互作用することを質量分析によって見出した。当該年度においては、免疫沈降等により、それらの相互作用が外部からのDNA損傷ストレスに依存せず比較的安定的であることが明らかとなった。また、前年度に樹立した脂質代謝関連遺伝子のノックアウト細胞株を用いて、その影響について解析を行なった。具体的には、1)脂質代謝因子のノックアウトによって細胞増殖に遅延が見られたが、2)DNA損傷に応答したFANCD2のモノユビキチン化には異常は見られなかった。しかし、3)ヒストンバリアントH2AXのリン酸化(DNA損傷マーカーとして知られる)の顕著な減弱が見出された。本研究課題で着目している脂質代謝関連因子はDNA損傷応答・修復への関与は全く報告されておらず、特に3)の結果は脂質代謝制御とDNA損傷のシグナル伝達の新たな機能的連関を示唆する成果と言える。今後より詳細にこれらのシグナル伝達経路を解析するため、樹立したノックアウト細胞に野生型、または変異導入によって酵素活性を欠失した変異型を安定発現した細胞をすでに樹立済みである。 また、申請者はFANCD2遺伝子のノックアウトによって脂質代謝制御に異常が見られることを前年度に明らかにしたが、同様の脂質代謝異常が他のFAタンパク質の発現抑制によっても引き起こされることが新たに判明した。これらの結果はFANCD2のみならず、他のFAタンパク質においても脂質代謝制御に関与する可能性を示唆しており、ファンコニ貧血患者において見られる脂質代謝異常の病態との関連性が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度、新型コロナウイルスの蔓延に伴う大学業務の大幅な変更への対応のため、本研究課題にやや遅れが見られていた。しかし、前年度に行なった研究費の次年度使用、研究協力者との緊密な情報交換などによって当該年度においてはその遅れをおおむね取り戻しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の申請時に、核心をなす学術的「問い」として設定した「脂質代謝制御におけるFAタンパク質の機能的関与」がこれまでの解析により明らかになりつつある。今後は、研究実施計画に基づき、これらの生物学的意義、および詳細なメカニズムの解明を目指す。具体的には、脂質代謝関連因子の欠損によって引き起こされるDNA損傷応答の異常について、樹立した遺伝子破壊株、および相補細胞株を用いて調べる。またFANCD2をはじめとするFAタンパク質と脂質代謝関連因子の細胞内局在についての顕微鏡解析も行う予定である。
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